自作農創設特別措置法第一五条の規定により宅地を附帯買収する場合において、その宅地上に生立する樹木が、買収対価の算定上宅地自体の買収対価とは別に考慮を払うことを必要とする程度の価額を有するものであるときは、右宅地の買収処分の効果は、右樹木には及ばないと解するのが相当である。
宅地の附帯買収処分の効果は宅地上の樹木にも及ぶか
民法86条,自作農創設特別措置法(昭和22年法律241号による改正法律)15条,自作農創設特別措置法(昭和22年法律241号による改正法律)6条2項,自作農創設特別措置法施行令11条,昭和22年5月4日農林省告示71号「宅地等の対価算定基準に関する件」,憲法29条
判旨
土地の公用収用において、その上に生立する樹木が土地の対価とは別に格別の考慮を必要とする程度の価格を有し、かつ法制度上その価格を買収対価に算入し得ない場合には、憲法29条3項の正当な補償の要請に鑑み、土地買収の効果は当然には樹木に及ばない。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法15条に基づく宅地の附帯買収処分がなされた際、その宅地上に生立する「かなりの高額な立木」の所有権が、対価算定の考慮なしに当然に国(および譲受人)に移転するか。憲法29条の「正当な補償」との関係が問題となる。
規範
樹木は通常土地の一部であり、土地売買の効果は原則として樹木にも及ぶ。しかし、公用収用(自作農創設特別措置法15条による宅地の附帯買収等)において、樹木が土地対価とは別に格別の考慮を払うべき程度の価格を有し、かつ当時の対価算定基準においてその価格を算入しうる途が認められていない場合には、樹木に対して正当な補償がなされないこととなるため、収用処分の効果は当該樹木には及ばない(憲法29条違反を回避する解釈)。
重要事実
被告(上告人)の先々代が買い受けた宅地(チ二番宅地)につき、昭和23年、自作農創設特別措置法に基づき政府が買収し、原告(被上告人)へ売り渡した。当該宅地上には立木が生立していたが、昭和24年当時の立木価格は6万円であったのに対し、宅地の買収・売渡対価は435円50銭に過ぎなかった。原審は、特別の除外がない限り立木は宅地の構成部分として当然に原告の所有に帰すと判断したため、被告らがこれを伐採搬出した行為を不法行為と認めた。
あてはめ
本件立木は、伐採時の価格が6万円であり、宅地対価(435円50銭)に比して極めて高額であったことが窺える。自創法15条に基づく宅地買収の対価算定基準(昭和22年農林省告示71号等)を検討すると、樹木の価格を別途算入する規定は存在しない。このように、樹木が格別の考慮を必要とする価格を有しながら、対価算定上これが無視される状況で、買収の効果が当然に立木に及ぶと解することは、正当な補償なくして所有権を侵すことになり、憲法29条に違反する。したがって、立木が土地対価に包含されたと認められない限り、買収の効果は立木には及ばず、所有権は移転しない。
結論
宅地の買収処分の効果が当然に立木に及ぶとした原審の判断は、自創法15条の解釈適用を誤り、審理不尽である。立木の価格と土地対価を比較考量し、買収の効果が及ぶか再審理させるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
公用収用における「正当な補償」の解釈を示す重要判例。土地と定着物の権利関係が分かれる場合において、形式的な「土地の一部」という構成をとることで対価なき奪取を招く解釈を、合憲的解釈の観点から否定する際に用いる。
事件番号: 昭和32(オ)42 / 裁判年月日: 昭和33年7月29日 / 結論: 棄却
立木法の適用を受けない立木の買受人においてこれに明認方法を施さないうちに右立木が伐採された場合、右買受人は当然伐木の所有者となるけれども、立木当時既に明認方法の欠缺を主張し得べき正当の利益を有した第三者に対する関係においては、伐木所有権をもつてこれに対抗し得ないものと解すべきである。
事件番号: 昭和25(オ)236 / 裁判年月日: 昭和29年7月19日 / 結論: 棄却
一 農地買収計画に対する異議決定に関与した村農地委員が、県農地委員会の委員して、右計画に対する訴願裁決に関与することは違法ではない。 二 行政事件訴訟特例法第一一条によつて農地買収計画に関する訴願裁決の取消を求める請求を棄却するについて、単に一般的に農地買収は公共の福祉のためになされる旨を判示し、具体的に当該事件につい…
事件番号: 昭和25(オ)42 / 裁判年月日: 昭和29年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地改革における買収対価が憲法29条3項の「正当な補償」にあたるか否かが争われ、先行の大法廷判決を維持して合憲と判断された。 第1 事案の概要:戦後の農地改革を推進するために制定された自作農創設特別措置法に基づき、政府が地主の所有する農地を強制的に買収した。上告人(地主側)は、同法6条3項に定める…