自作農創設特別措置法三〇条一項一号により国が未墾地を買収する場合において、当該未墾地上に、立木に関する法律の適用も受けず、いわゆる明認方法もほどこされていないが、独立した取引価値のある樹木が生立するにもかかわらず、当該買収対価中に右樹木の価格が算定されていないときは、当該未墾地買収処分の効力は、右樹木に及ばないものと解すべきである。
自作農創設特別措置法三〇条一項一号による未墾地買収処分の効力が地上樹木に及ばないとされた事例
自作農創設特別措置法30条1項1号
判旨
土地上の樹木が独立した取引価値を有する場合、その敷地である土地の買収の効力が当然に樹木に及ぶものではなく、買収対価中に樹木の価格が算定されていないときは、土地買収の効力は樹木に及ばない。
問題の所在(論点)
未墾地の買収処分(自創法30条1項1号)の効力が、特段の公示方法を備えていないが独立の取引価値を有する地上樹木に当然に及ぶか。また、対価が支払われていない場合に買収の効力を認めることができるか。
規範
土地上の樹木は、原則として土地の構成部分であるが、立木法や明認方法による独立のほか、独立した取引価値を有する場合も土地とは独立の物件として取り扱い得る。行政処分による未墾地の買収において、独立の取引価値を有する地上樹木の所有権を国が取得するためには、買収対価中に当該樹木の価格が算定されていることを要する。相当な価格を有する樹木の価格が算定されていない場合、当該樹木は買収対象から除外されたものと解すべきであり、土地買収の効力は樹木に及ばない。
重要事実
国は、自作農創設特別措置法に基づき、上告人所有のd番原野、e番山林および外2筆の土地を買収した。e番山林とf番原野については、土地とは別に地上樹木(黒松)の買収手続が取られ、立木価格が支払われたが、d番原野とg番原野については土地の買収手続のみがなされた。しかし、d番・g番の土地上にも相当の取引価値を有する黒松等が生立しており、かつ、土地の買収単価は立木を別個に買収した土地と同額であった。
あてはめ
d番・g番の土地上に生立する黒松等は、独立した取引価値を有する。本件では、地上樹木を別個に買収した土地と、そうでないd番・g番の土地の買収単価が同額(1反歩当たり30円24銭)である。土地自体の価格差や樹木の存否等に関する特別の事情がない限り、d番・g番の買収対価には地上樹木の価格が算定されていないと認めるのが論理則・経験則に合致する。正当な補償なく所有権を侵害することは許されないため、対価が算定されていない以上、本件買収処分の効力は地上樹木には及ばず、当該樹木は買収対象から除外されたと解される。
結論
独立の取引価値を有する樹木の価格を買収対価に含めていない以上、土地買収の効力は樹木には及ばず、所有権は国に移転しない。
実務上の射程
土地とその定着物の処分の随伴性に関する原則の例外を示す。行政処分による公用収用の場面において、憲法29条3項の正当な補償の観点から、対価の支払の有無を処分対象の解釈に反映させる手法として重要である。
事件番号: 昭和40(オ)654 / 裁判年月日: 昭和41年10月21日 / 結論: 棄却
地盤上に植栽された立木の所有権を取得した者は、明認方法等の対抗要件を備えないかぎり、右地盤(土地)を地上の右立木とともに買いうけ右土地についてその所有権移転登記を経由した第三者に対し、前記立木所有権取得を対抗することができない。
事件番号: 昭和23(オ)53 / 裁判年月日: 昭和24年9月27日 / 結論: 棄却
ある土地につき実質上地上権を有せず登記簿上地上権として表示されているに過ぎない者は、右土地につき時効により地上権を取得した者に対し、その登記の欠缺を主張することができない。
事件番号: 昭和28(オ)620 / 裁判年月日: 昭和29年8月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人の代理人であることを示さず、他人の物を自己の物として売却した場合であっても、所有者が予めその処分行為を承諾していれば、当該売買は有効であり、買受人は直ちに所有権を取得する。 第1 事案の概要:上告人(所有者)は、訴外Dに対し、本件立木について「Dの手において自ら他に売却すること」を委ねる旨の合…
事件番号: 昭和36(オ)208 / 裁判年月日: 昭和38年12月13日 / 結論: 棄却
他人の所有する土地に権原によらずして自己所有の樹木を植え付けてその時から右立木のみにつき所有の意思をもつて平穏かつ公然に二〇年間占有した者は、時効により右立木の所有権を取得する。