他人の所有する土地に権原によらずして自己所有の樹木を植え付けてその時から右立木のみにつき所有の意思をもつて平穏かつ公然に二〇年間占有した者は、時効により右立木の所有権を取得する。
他人所有地の立木についての取得時効の成否。
民法162条1項
判旨
他人の土地に権原なく植栽された立木について、20年間の占有による時効取得が認められる。また、当該立木を除外して土地を買い受けた者は、立木の所有権取得の対抗要件欠如を主張する正当な利益を有する第三者に当たらない。
問題の所在(論点)
1.権原なく他人の土地に植栽された立木について、土地とは独立して時効取得が認められるか。 2.立木を売買対象から除外して土地を取得した者は、当該立木の時効取得について民法177条の「第三者」に該当するか。
規範
1.他人の土地に権原なく樹木を植え付けた者が、所有の意思をもって平穏かつ公然に20年間当該立木を占有したときは、時効によりその所有権を取得する(民法162条1項)。 2.不動産物権変動の対抗要件(民法177条)における「第三者」とは、不動産に関する物権の得喪変更の登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者をいう。特定の立木を除外して土地を買い受けた者は、当該立木の所有権取得に関して「第三者」に当たらない。
重要事実
被上告人は、他人の所有する本件係争地に権原なく杉立木を植え付け、植付時から所有の意思をもって20年間、平穏かつ公然と占有を継続した。一方、上告人は、前所有者から本件係争地を買い受けたが、その売買契約において「地上の杉立木を除外して」買い受けていた。その後、被上告人が杉立木の時効取得を主張したところ、上告人が明認方法等の対抗要件の欠如を主張して争った。
事件番号: 昭和28(オ)369 / 裁判年月日: 昭和30年5月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人の土地に植林をした者が立木の所有権を取得するためには、民法242条ただし書にいう「権原」に基づき附属させたことが必要であり、所有権取得の事実がない限り当該権原は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件山林を贈与または取得時効により取得したと主張して、当該山林に植林した立木の所有権を主張…
あてはめ
1.一筆の土地の平面の一部について時効取得が認められるのと同様、土地から分離独立し得る立木についても、時効取得の要件を充足する限り、独立して時効取得の対象となると解するのが合理的である。本件では、20年間の占有要件を満たしているため、被上告人は杉立木の所有権を時効取得する。 2.上告人は、本件土地の買受けに際して「杉立木を除外して」購入しており、当該立木については一切の取引関係に入っていない。したがって、上告人は立木の所有権取得について対抗要件の欠如を主張する「正当な利益を有する第三者」には当たらない。
結論
被上告人は本件杉立木の所有権を時効により取得する。上告人は対抗要件の欠如を主張できる第三者に該当しないため、被上告人は明認方法がなくても上告人に所有権を対抗できる。
実務上の射程
立木の独立した時効取得を認めた点に加え、民法177条の「第三者」の範囲を限定的に解釈する実務上の指針となる。特に、契約上の除外条項がある場合に、特定の客体に関する対抗問題から排除されることを明示した点で重要である。
事件番号: 昭和28(オ)620 / 裁判年月日: 昭和29年8月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人の代理人であることを示さず、他人の物を自己の物として売却した場合であっても、所有者が予めその処分行為を承諾していれば、当該売買は有効であり、買受人は直ちに所有権を取得する。 第1 事案の概要:上告人(所有者)は、訴外Dに対し、本件立木について「Dの手において自ら他に売却すること」を委ねる旨の合…