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地上権の時効取得が認められた事例
民法163条,民法265条
判旨
地上権を時効取得するには、土地の継続的な使用という外形的事実の存在に加え、その使用が地上権行使の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることを要する。
問題の所在(論点)
地上権の時効取得(民法163条)において、所有権以外の財産権の「自己のためにする意思」および「行使」を認定するために必要な要件は何か。
規範
地上権の時効取得(民法163条)が認められるためには、土地の継続的な使用という外形的事実の存在に加えて、その使用が「地上権行使の意思」に基づくものであることが客観的に表現されていることを要する。これは、土地所有者に対し、占有者が他人物権を主張していることを認識し、時効中断の機会を与える必要があるためである。
重要事実
本件各土地は、昭和3年以来、長崎県南松浦郡の特定郷が所有していた。被上告人は、13、4歳の頃から父に連れられて当該土地で杉の植付けや手入れを行い、昭和3年頃には自ら杉や檜を植栽し、その後も継続して手入れを行ってきた。被上告人宅では、玄祖父が近隣住民の税金を代納した代償として、立木所有を目的とした土地の専用を許されたとの言い伝えがあり、被上告人も立木所有の目的を持って土地を管理し続けていた。
事件番号: 昭和36(オ)208 / 裁判年月日: 昭和38年12月13日 / 結論: 棄却
他人の所有する土地に権原によらずして自己所有の樹木を植え付けてその時から右立木のみにつき所有の意思をもつて平穏かつ公然に二〇年間占有した者は、時効により右立木の所有権を取得する。
あてはめ
被上告人は昭和3年頃から昭和23年末頃までの間、本件各土地に杉・檜を植栽し継続的に手入れを行っており、「土地の継続的な使用という外形的事実」が認められる。また、被上告人家に伝わる「税金代納の代償として立木所有目的の専用を許された」という経緯に基づき、排他的に植林・管理を行っていた事実は、単なる事実上の使用ではなく「立木所有を目的とする地上権を行使する意思」が客観的に表現されたものと評価できる。相手方が主張する共同占有の事実は認められず、排他的占有が継続していたといえる。
結論
被上告人による本件各土地の地上権の時効取得が成立する。したがって、被上告人の請求を認めた原審の判断は正当である。
実務上の射程
民法163条の「自己のためにする意思をもって、財産権の行使をする」の解釈を示す。土地所有権の時効取得における「所有の意思」が占有権原の性質により外形的・客観的に定まるのと同様に、地上権の時効取得においても、単なる利用にとどまらず、特定の物権を行使していると外部から認識できる程度の客観的表現を要求する点に射程がある。答案では、単なる不法占有や賃借権との区別を論じる際にこの規範を用いる。
事件番号: 昭和44(オ)147 / 裁判年月日: 昭和44年12月11日 / 結論: 破棄差戻
所有権に基づいて不動産を占有する者についても民法一六二条の適用があることは当裁判所の判例とするところであつて、上告人が取得時効を主張する土地が、上告人(取得時効援用者)において所有権に基づき占有する土地にあたるとしても、取得時効の成否に影響はない。
事件番号: 昭和28(オ)369 / 裁判年月日: 昭和30年5月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人の土地に植林をした者が立木の所有権を取得するためには、民法242条ただし書にいう「権原」に基づき附属させたことが必要であり、所有権取得の事実がない限り当該権原は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件山林を贈与または取得時効により取得したと主張して、当該山林に植林した立木の所有権を主張…
事件番号: 昭和28(オ)1042 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が判決の対象とする土地の範囲について、原告が口頭弁論(釈明)において具体的に範囲を特定し、被告もそれを前提に防御を尽くしている場合には、判決目録の記載が事実調査の結果等と相まって客観的に特定可能であれば、処分権主義に反しない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、ある山林(7反1畝歩)のう…
事件番号: 昭和41(オ)364 / 裁判年月日: 昭和46年3月30日 / 結論: 破棄差戻
一定範囲の山林の時効取得を認めるにあたり、甲地所有者が係争地に杉苗を植えその育成に努めて来たと認定し、他方、その後乙地所有者が係争地の植え残された一部に杉苗を植え、刈払をし、係争地内から桑葉を採取したと認定しながら、特段の理由を示さず、甲地所有者が係争地の占有を継続したと判断したときは、理由不備の違法がある。