一定範囲の山林の時効取得を認めるにあたり、甲地所有者が係争地に杉苗を植えその育成に努めて来たと認定し、他方、その後乙地所有者が係争地の植え残された一部に杉苗を植え、刈払をし、係争地内から桑葉を採取したと認定しながら、特段の理由を示さず、甲地所有者が係争地の占有を継続したと判断したときは、理由不備の違法がある。
山林の時効取得の要件としての占有継続の判断に理由不備の違法があるとされた事例
民訴法595条6号,民法162条
判旨
土地の占有を継続したというためには、その部分につき客観的に明確な程度に排他的な支配状態を続けなければならない。また、時効取得における無過失の判断にあたっては、占有者が自己の所有と信じたことにつき具体的な事由を示す必要がある。
問題の所在(論点)
1. 他者が立ち入り利用している状況において、特定の者による土地の「占有」の継続(排他的支配)を認めることができるか。2. 取得時効の無過失の要件において、近隣住民の認識は占有者自身の無過失を裏付ける事由となるか。
規範
土地の占有の継続が認められるためには、当該土地につき客観的に明確な程度に排他的な支配状態を継続していなければならない。また、民法162条2項の「過失がなかった」といえるためには、自己の所有と信じたことについて具体的な合理的根拠(事由)が必要であり、単に近隣住民がそのように思っていたという外聞のみでは無過失の根拠として不十分である。
重要事実
山林の所有者Dは、本件係争地を自己の所有地の一部と信じて杉苗を植栽し、刈払い等の手入れを続けていた。しかし、同時期に隣接地の所有者Fの依頼を受けた者が同地の一部に植栽を行い、さらに隣接地の後継者Hの承諾を得た者が同地内で桑葉を採取するなどの事実も存在した。原審は、これらの事実が併存する中で、Dが本件係争地を単独占有していたと認定し、さらに近隣住民がDの所有だと思っていたという事実をもって、Dが自己の所有と信じたことに過失がないとして10年の短期取得時効を認めた。
あてはめ
1. 本件では、Dが植林・管理を行っている一方で、他者が隣接所有者の依頼や承諾に基づき植栽や収穫を行っており、Dによる支配が「客観的に明確な程度に排他的」であったとは直ちに言い難い。2. Dが無過失であるとする点について、原審は近隣住民の認識を挙げているが、これはD自身が自己の所有と信じるに至った「具体的な事由」とはいえず、無過失を基礎付ける理由として不適切である。
結論
Dによる排他的な占有の継続および無過失の認定には理由不備の違法がある。したがって、Dによる所有権の時効取得を認めた原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
取得時効の主張において、占有の「排他性」が争点となる場合に引用すべき判例である。特に、山林のように境界が不明瞭で双方が利用しているような事案では、客観的な支配の排他性を厳格に主張する際に有効である。また、無過失の立証において「周囲の認識」だけでは足りず、占有者自身の具体的な信憑根拠を特定する必要があることを示す際にも活用できる。
事件番号: 昭和44(オ)397 / 裁判年月日: 昭和48年6月15日 / 結論: 棄却
土地の時効取得を認めるについては、必ずしも目的土地の地番を認定することを要しない。
事件番号: 昭和35(オ)900 / 裁判年月日: 昭和37年8月3日 / 結論: 棄却
山林を買受け、未登記のままこれに檜等を植栽した者が、その後特に地上立木を除外することなくいわゆる二重売買を受け、所有権移転登記を経た者に対し、その植栽した立木の所有権を主張するためにはこれを公示する対抗要件を必要とする。
事件番号: 昭和37(オ)745 / 裁判年月日: 昭和39年2月6日 / 結論: 棄却
立木法の適用を受けない立木の買受人がこれに明認方法を施さないうちにこれを伐採した場合、右買受人は、当然伐木の所有者となるけれども、立木当時既に明認方法の欠点を主張しうべき正当の利益を有した第三者に対する関係においては、伐木所有権をもつて対抗できない。
事件番号: 昭和33(オ)484 / 裁判年月日: 昭和36年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の時効取得の要件として、当該不動産が「他人の物」であることを判示する必要はあるが、その所有者が特定の誰であるかまでを確定する必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が本件不動産の特定の前所有者についての判定を誤ったと主張し、時効取得の成否を争った。原審は、本件不動産が被上告人(時効取得…