山林を買受け、未登記のままこれに檜等を植栽した者が、その後特に地上立木を除外することなくいわゆる二重売買を受け、所有権移転登記を経た者に対し、その植栽した立木の所有権を主張するためにはこれを公示する対抗要件を必要とする。
一 民法第一六二条の取得時効完成の基礎となる占有と認められないとされた事例 二 地盤所有権の取得につき未登記のままその地盤上に植栽された立木の所有権の対抗要件の要否
民法162条,民法177条,民法242条
判旨
土地の所有者から立木を除外せずに土地を買い受けた第三者に対し、当該立木を植栽した者がその所有権を主張するためには、明認方法等の公示による対抗要件を具備する必要がある。
問題の所在(論点)
土地の譲渡が行われた際、その土地上の立木について、植栽者が土地の譲受人に対して所有権を主張するために公示(対抗要件)が必要か、という点(民法177条の適用範囲)。
規範
土地と立木は別個の不動産として扱われ得るが、土地の譲受人が立木を含めて買い受けた場合、立木の所有権を植栽者等の前所有者が譲受人(第三者)に対抗するためには、明認方法その他の公示方法を備えることを要する。
重要事実
上告人は本件山林に立木を植栽した。その後、被上告人両名は、訴外Dから本件山林を買い受けたが、その際、地上立木を特に除外する旨の合意はなされていなかった。上告人は、自身が植栽した立木であるとして、被上告人らに対しその所有権を主張した。
事件番号: 昭和32(オ)325 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
地盤所有権の取得につき未登記のままその地盤上に植栽した立木の所有権を、第三者に対抗するには、公示方法を必要とする。
あてはめ
被上告人らは、土地の売主である訴外Dから「特に地上立木を除外することなく」本件山林を買い受けている。この場合、土地の所有権とともに立木の所有権も移転の対象に含まれる。したがって、土地の譲受人は立木についても利害関係を有する「第三者」(民法177条)に該当するため、上告人が独自の立木所有権を維持・主張するためには、明認方法等の公示を備えていなければならないが、本件ではそれが欠けていると解される。
結論
上告人は、公示(対抗要件)を備えていない以上、被上告人らに対して本件立木の所有権を主張することはできない。
実務上の射程
明認方法の具備が必要とされる典型的な場面(立木の譲渡・留保)を確認する判例である。答案上は、立木が土地の付合物(民法242条)となるか別個の不動産となるかの文脈で、対抗関係(177条)の要否を論じる際に活用する。土地譲渡時に立木を「除外」していない事実が、譲受人を177条の第三者とする決定打となる。
事件番号: 昭和37(オ)745 / 裁判年月日: 昭和39年2月6日 / 結論: 棄却
立木法の適用を受けない立木の買受人がこれに明認方法を施さないうちにこれを伐採した場合、右買受人は、当然伐木の所有者となるけれども、立木当時既に明認方法の欠点を主張しうべき正当の利益を有した第三者に対する関係においては、伐木所有権をもつて対抗できない。
事件番号: 昭和35(オ)86 / 裁判年月日: 昭和37年3月2日 / 結論: 棄却
山林の入口、山林内路傍、山林頂上の三ケ所の立木に、幅約二〇糎、長さ約四五糎、厚さ約二糎の板に、「a山林六町七反八畝歩は名義人において買受けたから伐採を禁ずる」旨記載した立札を釘で打付けたこと、右山林は俗にbと呼ばれていることの事実があるときは、右立札による公示は、右山林内の立木所有権の明認方法として有効である。
事件番号: 昭和27(オ)350 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法242条ただし書にいう権原によって附属させた物の所有権は、公示方法を具備していなくても第三者に対抗することができる。 第1 事案の概要:本判決文には具体的な事案の詳細は記載されていないが、不動産に附属した物(立木等と推認される)の所有権の帰属およびその第三者に対する対抗力が争点となった事案であ…
事件番号: 昭和30(オ)499 / 裁判年月日: 昭和34年8月7日 / 結論: 破棄差戻
土地の所有権を移転するにあたり、当事者間の合意によつて地上立木の所有権を留保したときは、該留保を公示するに足る方法を講じない以上、これをもつてその地盤である土地の権利を取得した第三者に対抗しえないものと解すべきである。