地盤所有権の取得につき未登記のままその地盤上に植栽した立木の所有権を、第三者に対抗するには、公示方法を必要とする。
地盤所有権の取得につき未登記のままその地盤上に植栽された立木の所有権と対抗要件。
民法177条,民法242条但書
判旨
地盤所有者が権原に基づき植栽した立木の所有権を独立の客体として第三者に対抗するには、明認方法等の対抗要件を備える必要がある。
問題の所在(論点)
地盤所有者が自ら植栽した立木について、地盤所有権を失った後も、対抗要件を備えることなく立木所有権を第三者に対抗できるか(民法177条・242条但書の適用関係)。
規範
地盤所有者が権原に基づき立木を植栽した場合、民法242条但書の類推適用により立木は独立の所有権の客体となり得る。しかし、立木所有権の地盤所有権からの分離は、本来地盤に付合して一体として移転すべき物権変動の効果を制限するものである。したがって、かかる立木所有権の物権的効果を第三者に対抗するためには、少なくとも立木所有権を公示する対抗要件(明認方法等)を必要とする。
重要事実
上告人は訴外Dから山林を買い受け、地盤所有者として本件立木を植栽した。しかし、上告人は山林の移転登記を経ないうちに、Dが山林を訴外Eに売却して移転登記を完了させ、さらに被上告人BがEから買い受けて移転登記を経た。上告人はかつて立木に明認方法を施していたが、Bらが山林を取得した時点では、その明認方法は既に消滅していた。
事件番号: 昭和35(オ)900 / 裁判年月日: 昭和37年8月3日 / 結論: 棄却
山林を買受け、未登記のままこれに檜等を植栽した者が、その後特に地上立木を除外することなくいわゆる二重売買を受け、所有権移転登記を経た者に対し、その植栽した立木の所有権を主張するためにはこれを公示する対抗要件を必要とする。
あてはめ
上告人は当初地盤所有者として立木を植栽したため、民法242条但書の類推適用により立木は独立の所有権の客体となった。しかし、上告人は地盤所有権の登記を欠くため、地盤所有権については対抗要件を備えた被上告人に対抗できない。次に立木所有権について検討すると、被上告人による山林取得の際、立木を売買の目的から除外する合意はなかった。また、上告人がかつて施した明認方法は被上告人の取得時には消滅しており、公示による対抗要件を欠いている。したがって、地盤の物権変動に伴い立木も移転したとみなされる状況において、独立の立木所有権を被上告人に対抗することはできない。
結論
上告人は、明認方法等の対抗要件を欠く以上、本件立木の所有権を第三者である被上告人に対抗できない。
実務上の射程
土地と立木の所有者が同一である状態から、土地のみが譲渡された場合や、本件のように土地所有権の対抗問題で敗れた結果として土地・立木の所有者が分離した局面において、立木所有権を主張するための対抗要件の要否を判断する際の基準となる。農作物(稲)と異なり、立木は成育期間が長く占有状態が不明確であるため、厳格に公示が必要とされる。
事件番号: 昭和37(オ)745 / 裁判年月日: 昭和39年2月6日 / 結論: 棄却
立木法の適用を受けない立木の買受人がこれに明認方法を施さないうちにこれを伐採した場合、右買受人は、当然伐木の所有者となるけれども、立木当時既に明認方法の欠点を主張しうべき正当の利益を有した第三者に対する関係においては、伐木所有権をもつて対抗できない。
事件番号: 昭和32(オ)355 / 裁判年月日: 昭和36年5月4日 / 結論: 破棄差戻
物件変動の対抗要件としての明認方法は、第三者が利害関係を取得した当時にも存在するものでなければ、これをもつて当該第三者に対抗することはできない。
事件番号: 昭和35(オ)86 / 裁判年月日: 昭和37年3月2日 / 結論: 棄却
山林の入口、山林内路傍、山林頂上の三ケ所の立木に、幅約二〇糎、長さ約四五糎、厚さ約二糎の板に、「a山林六町七反八畝歩は名義人において買受けたから伐採を禁ずる」旨記載した立札を釘で打付けたこと、右山林は俗にbと呼ばれていることの事実があるときは、右立札による公示は、右山林内の立木所有権の明認方法として有効である。
事件番号: 昭和30(オ)499 / 裁判年月日: 昭和34年8月7日 / 結論: 破棄差戻
土地の所有権を移転するにあたり、当事者間の合意によつて地上立木の所有権を留保したときは、該留保を公示するに足る方法を講じない以上、これをもつてその地盤である土地の権利を取得した第三者に対抗しえないものと解すべきである。