土地の時効取得を認めるについては、必ずしも目的土地の地番を認定することを要しない。
土地の取得時効を認めるについて地番を認定することの要否
民法162条
判旨
不動産の時効取得を認めるにあたり、対象となる土地の範囲が特定されていれば足り、必ずしもその土地の地番を特定して認定する必要はない。
問題の所在(論点)
不動産の取得時効の成否を判断するにあたり、対象不動産の地番を特定して認定することが必要か。
規範
不動産の時効取得(民法162条)の成立要件として、占有の対象である目的物の特定は必要であるが、その特定は現況等によって客観的に定まれば足りる。したがって、裁判所が時効取得を認めるに際し、目的土地の正確な地番を認定することは必須ではない。
重要事実
上告人と被上告人の間で、本件係争山林の所有権帰属が争われた。原審は、被上告人が本件係争山林の「現地」を時効により取得した旨を認定したが、当該山林が登記簿上の何番地にあたるかについては明確な認定を示さなかった。これに対し上告人は、地番が特定されていない以上、時効取得の認定は違法である旨を主張して上告した。
あてはめ
事件番号: 昭和33(オ)484 / 裁判年月日: 昭和36年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の時効取得の要件として、当該不動産が「他人の物」であることを判示する必要はあるが、その所有者が特定の誰であるかまでを確定する必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が本件不動産の特定の前所有者についての判定を誤ったと主張し、時効取得の成否を争った。原審は、本件不動産が被上告人(時効取得…
時効取得は、一定期間の継続した占有という事実状態を権利取得の根拠とするものである。本件において、原審は係争山林の現地の占有状況に基づき時効取得を認定している。目的物が現地において特定されている以上、それが不動産登記法上のどの地番に該当するかという形式的な特定は、時効取得という実体法上の効果を認めるための不可欠な要件ではない。したがって、地番の認定がないことをもって時効取得の判断を不当とすることはできない。
結論
時効取得の認容に際し地番の認定は不要である。本件山林の現地における時効取得を認めた原審の判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
訴訟実務において、境界紛争や地番が錯綜している土地の時効取得を主張する場合、図面や現況写真等で「どの範囲を占有したか」を特定すれば足りる。地番の誤りや不明があっても直ちに請求が排斥されるわけではないことを示す。答案上は、時効取得の客観的要件(占有)の対象特定に関する論述で活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)724 / 裁判年月日: 昭和38年8月27日 / 結論: 棄却
山林の字図の記載と異なる事実認定をしても理由不備の違法、経験則違反は生じない。
事件番号: 昭和41(オ)364 / 裁判年月日: 昭和46年3月30日 / 結論: 破棄差戻
一定範囲の山林の時効取得を認めるにあたり、甲地所有者が係争地に杉苗を植えその育成に努めて来たと認定し、他方、その後乙地所有者が係争地の植え残された一部に杉苗を植え、刈払をし、係争地内から桑葉を採取したと認定しながら、特段の理由を示さず、甲地所有者が係争地の占有を継続したと判断したときは、理由不備の違法がある。
事件番号: 昭和28(オ)1042 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が判決の対象とする土地の範囲について、原告が口頭弁論(釈明)において具体的に範囲を特定し、被告もそれを前提に防御を尽くしている場合には、判決目録の記載が事実調査の結果等と相まって客観的に特定可能であれば、処分権主義に反しない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、ある山林(7反1畝歩)のう…