山林の字図の記載と異なる事実認定をしても理由不備の違法、経験則違反は生じない。
山林の字図の記載と異なる事実認定は違法か。
民訴法185条
判旨
不動産登記簿の記載や字図の内容は、必ずしも権利関係の実態や現地の実況と合致するものではない。したがって、これらと異なる事実を認定しても、直ちに経験則違反や理由不備の違法があるとはいえない。
問題の所在(論点)
事実認定における登記簿・字図・境界標の証拠価値、および登記簿上の地積と実測面積が著しく異なる認定をなすことの是非(経験則違反の有無)。
規範
事実認定において、不動産登記簿の記載は必ずしも権利関係の実態と一致するものではなく、また字図の記載と現地の実況が符合しないこともあり得る。さらに、登記簿上の面積と実測面積に大きな開きがある場合であっても、証拠関係に照らして合理的な説明がつく限り、その認定が直ちに経験則に反するとはいえない。
重要事実
上告人と被上告人が、係争山林の所有権を巡って争った。上告人は、山林の払下を受けた経緯や、字図の記載、境界標の不存在、および登記簿上の面積(二畝歩)と実測面積(一町歩余)の著しい乖離を根拠に、原審の事実認定が経験則に反し、理由不備があると主張して上告した。特に、登記簿上の面積と実測が大幅に異なる認定がなされた点が争点となった。
あてはめ
まず、証拠の取捨選択は事実審の専権事項であり、一部に真実でない部分がある証言であっても、どの部分を信じるかは裁判所の裁量に属する。次に、不動産登記簿や字図は必ずしも実態を反映していないため、被上告人の供述が登記簿と齟齬していても直ちに虚偽とは断じ得ない。さらに、登記簿上「二畝歩」とある山林を、実測「一町歩余」と認定することも、証拠関係に照らせば経験則に反するとはいえない。境界標の不存在も、直ちに境界線の認定を妨げるものではない。
結論
原審の事実認定に違法はなく、上告を棄却する。登記簿や字図の記載に拘束されず、諸証拠に基づき実態に即した所有権の範囲を認めた原判決は適法である。
実務上の射程
所有権確認訴訟における事実認定のあり方を示す。登記簿の記載や字図、地積の記載が実態と異なる場合があることを前提に、自由心証主義に基づく合理的な事実認定の許容範囲を広く認めている。答案上は、不動産の特定や境界認定において、公簿上の記載と実態が異なる場合の主張を構成する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)793 / 裁判年月日: 昭和36年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公文書である図面に記載された境界線であっても、裁判所における事実認定において絶対的な証拠力を有するものではなく、他の的確な証拠によりその記載の誤りを認めることが可能である。 第1 事案の概要:本件土地の境界確定にあたり、公文書である甲号証(図面)が提出された。しかし、原審は他の証拠を総合して境界線…
事件番号: 昭和31(オ)761 / 裁判年月日: 昭和33年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公的な図面(字限図)について有効になされた訂正であっても、その訂正が客観的な事実に符合するか否かは裁判所の自由な心証に委ねられており、裁判所が当該訂正後の内容を事実認定の資料として採用しないことも許容される。 第1 事案の概要:上告人は、土地の境界等に関する主張の根拠として、有効に訂正された字限図…
事件番号: 昭和44(オ)397 / 裁判年月日: 昭和48年6月15日 / 結論: 棄却
土地の時効取得を認めるについては、必ずしも目的土地の地番を認定することを要しない。