判旨
検証調書に地番等の表示上の誤りがあっても、現場で対象範囲を特定した上で実施されたのであれば検証は適法であり、訴訟手続上の瑕疵に対する異議権の放棄・喪失や、証拠の自由な評価は裁判所の合理的な裁量に属する。
問題の所在(論点)
1. 検証調書における対象物件の表示の誤りが、検証手続全体の違法事由となるか。2. 証人尋問の手続的瑕疵を上告理由とするための要件。3. 証拠の評価および事実認定に関する裁判所の裁量の範囲。
規範
検証手続の適法性は、調書の形式的記載のみならず、現場で当事者の立会いのもと対象が特定され実施されたかという実態により判断される。また、証拠調べの手続に瑕疵があったとしても、当事者が遅滞なく異議を述べない限り、その瑕疵は治癒される(責問権の放棄・喪失)。さらに、証拠の採否および証拠価値の評価は、特段の事情がない限り裁判所の自由な心証(自由心証主義)に委ねられる。
重要事実
上告人(原告)と被上告人の間で山林の所有権が争われた事案。第一審の検証調書の見取図において、検証対象の表示が上告人の主張する地番ではなく、被上告人の主張に沿った表示(b番のd山林)で記載されていた。また、証人尋問の方法に瑕疵があったと上告人が主張する一方で、記録上、当時の手続において上告人が異議を述べた形跡は認められなかった。原審はこれらの証拠に基づき事実認定を行い、上告人の請求を退けたため、上告人が審理不尽・理由不備等を理由に上告した。
あてはめ
1. 検証について、調書の記載上は混同を招く表示があったものの、実際には現場で当事者代理人双方が陳述して範囲を特定した上で施行されており、手続の実態に照らせば適法である。2. 証人尋問の瑕疵については、記録上上告人が異議を述べた形跡がない以上、責問権を喪失しており、当該証言を証拠として採用することに妨げはない。3. 証言の内容や書証(甲3号証)をどの程度信用し、事実認定の資料とするかは原審の自由な裁量の範囲内であり、不合理な点はない。
結論
本件検証および証拠調べの手続に違法はなく、原審の事実認定も適法な裁量権の行使である。したがって、審理不尽や理由不備の主張は採用できず、上告を棄却する。
事件番号: 昭和33(オ)792 / 裁判年月日: 昭和36年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、証人の証言の一部を採用し、他の部分を措信しないという自由な評価を行うことが認められる。また、当事者の主張と供述が一貫している場合には、それに基づき事実を認定することが可能である。 第1 事案の概要:被上告人は、係争地を含む山林を買い受けたと主張していた。第一審および第二審において、証人D…
実務上の射程
実務上、検証調書の細かな表示ミスが直ちに手続違憲や違法に繋がるわけではないことを示す。また、訴訟手続の瑕疵(民訴法147条の責問権)については、その場での異議の有無が上告審での主張の可否を分ける重要なポイントとなることを再確認する資料として機能する。
事件番号: 昭和36(オ)724 / 裁判年月日: 昭和38年8月27日 / 結論: 棄却
山林の字図の記載と異なる事実認定をしても理由不備の違法、経験則違反は生じない。
事件番号: 昭和32(オ)406 / 裁判年月日: 昭和34年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】役場備付の公簿上の図面等であっても、他の証拠に照らしてその記載が真実と認め難い場合には、裁判所はこれを証拠として採用しないことができる。 第1 事案の概要:上告人は、役場に備え付けられていた公簿上の図面等の記載を根拠として、原審の事実認定に経験則違反があると主張した。しかし、原審は当該図面の記載を…
事件番号: 昭和34(オ)726 / 裁判年月日: 昭和37年9月14日 / 結論: 破棄差戻
丙を代理人として、甲の先代から不動産を買い受けた乙が、丙にその所有権を移転する意思がないにも拘らず、たまたま右の売買契約書に買主名義が丙となつていた関係上、丙をして甲に対する所有権移転登記手続請求の訴を提起させ、その勝訴の確定判決に基づいて甲より丙に所有権移転登記を受けさせた場合には、民法第九四条第二項の法意に照し、乙…