判旨
役場備付の公簿上の図面等であっても、他の証拠に照らしてその記載が真実と認め難い場合には、裁判所はこれを証拠として採用しないことができる。
問題の所在(論点)
役場備付の公簿上の図面等について、裁判所が他の証拠を優先してその記載内容を否定(措信しない)することは、経験則に反するか。
規範
裁判官は、自由心証主義に基づき証拠の取捨選択を行う権限を有する。公的機関が作成・保管する図面等の公簿であっても、特段の証明力が法律上強制されるものではなく、他の証拠関係に照らしてその記載内容の真実性に疑義がある場合には、これを排斥して事実認定を行うことが許される。
重要事実
上告人は、役場に備え付けられていた公簿上の図面等の記載を根拠として、原審の事実認定に経験則違反があると主張した。しかし、原審は当該図面の記載を真実と認めず、他の証拠に基づき事実を認定していた。
あてはめ
本件において、役場備付の公簿上の図面等の記載が存在したものの、他の証拠を総合的に検討した結果、当該記載内容を真実と認めることは困難であった。このような状況下で、公簿の記載を措信せず他の証拠を採用することは、証拠の取捨選択および事実認定の範囲内であり、何ら経験則に反するものではないと解される。
結論
公簿上の図面等の記載であっても、他の証拠により真実と認め難いときはこれを措信しないことができるため、経験則違反には当たらない。
実務上の射程
自由心証主義(民訴法247条)の限界に関する判例である。公文書の形式的証拠力が認められる場合でも、実質的証拠力(記載内容の正確性)については他の証拠との比較により裁判所の合理的な裁量に委ねられることを示す。答案上は、公的な図面等と現況が異なる事案において、証拠の取捨選択の正当性を基礎付ける際に活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)507 / 裁判年月日: 昭和32年10月31日 / 結論: 破棄差戻
書証の記載およびその体裁から、特段の事情のない限り、その記載どおりの事実を認めるべきである場合に、なんら首肯するに足る理由を示すことなくその書証を排斥するのは、理由不備の違法を免れない。
事件番号: 昭和39(オ)151 / 裁判年月日: 昭和40年6月29日 / 結論: 破棄差戻
官林図の測量基点の表示が不明で各定点間の方位・角度・距離の記載が不明確であるという理由だけで、係争地と酷似する形状を示す当該官林図をもつて係争地特定の証拠とすることができないとした判断には審理不尽の違法がある。
事件番号: 昭和33(オ)792 / 裁判年月日: 昭和36年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、証人の証言の一部を採用し、他の部分を措信しないという自由な評価を行うことが認められる。また、当事者の主張と供述が一貫している場合には、それに基づき事実を認定することが可能である。 第1 事案の概要:被上告人は、係争地を含む山林を買い受けたと主張していた。第一審および第二審において、証人D…