県庁備付の地積図、町役場備付の字限図であつても、境界確定について絶対的証拠力があるものではない。
地積図、字限図の証拠力
民訴法185条
判旨
公図(地積図、字限図)は土地の範囲や位置を認定する上での証拠資料となり得るが、それ自体に絶対的な証拠力が認められるものではなく、裁判所が他の証拠に基づきこれを排斥しても採証法則に違反しない。
問題の所在(論点)
事実認定において、公図(地積図、字限図)に絶対的な証拠力が認められるか。また、裁判所がこれらを排斥して他の証拠に基づき土地の所在を認定することは許されるか。
規範
公図(地積図・字限図)は、明治期の地押丈量に基づき作成された歴史的経緯を有するが、その正確性には限界がある。したがって、これら図面には土地の境界や所在を確定させる「絶対的証拠力」は認められず、裁判所は自由心証(民事訴訟法247条)に基づき、他の証拠(和解書、証言等)と照らし合わせて、その証明力を適宜判断することができる。
重要事実
本件土地の所有権の帰属および所在が争われた事案において、上告人(原告)は、町役場備え付けの字限図や県庁備え付けの地積図を根拠として、自己の主張する土地の範囲が正しいと主張した。一方、原審は、過去の紛争の際に作成された和解示談書(乙三号証)や、関係者の証言を重視し、上告人の主張する図面等の証拠力は上告人の主張を支持するに足りないとして、これを排斥した。上告人は、図面を排斥した認定には採証法則違反や理由不備があるとして上告した。
事件番号: 昭和39(オ)151 / 裁判年月日: 昭和40年6月29日 / 結論: 破棄差戻
官林図の測量基点の表示が不明で各定点間の方位・角度・距離の記載が不明確であるという理由だけで、係争地と酷似する形状を示す当該官林図をもつて係争地特定の証拠とすることができないとした判断には審理不尽の違法がある。
あてはめ
本件において、原審は字限図や地積図といった図面資料の内容を検討した上で、和解示談書や証人(D、E、Fら)の証言により認定される事実関係(特定の土地が共有名義にされた経緯等)を優先した。地積図や字限図は土地の状況を示す一資料にすぎず、特段の事情がない限り、他の有力な証拠(紛争解決の合意を示す書面や具体的な証言)に優先する絶対的な効力を持つものではない。したがって、原審がこれらの図面を「上告人の主張を支持するに足りない」と評価し、他の証拠に基づき事実認定を行った過程に違法はないといえる。
結論
公図(地積図、字限図)に絶対的証拠力はなく、裁判所がこれを排斥して他の証拠により土地の所在を認定しても、採証法則に違反しない。
実務上の射程
土地の境界紛争や所有権確認訴訟において、公図を唯一の決定打として主張することの限界を示す。実務上は、図面のみならず、占有の経緯や過去の合意文書(和解書等)を併せて立証に用いるべきであり、判決が図面の正確性を否定したとしても、それが直ちに上告理由(採証法則違反)にはならないことを念頭に置く必要がある。
事件番号: 昭和32(オ)406 / 裁判年月日: 昭和34年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】役場備付の公簿上の図面等であっても、他の証拠に照らしてその記載が真実と認め難い場合には、裁判所はこれを証拠として採用しないことができる。 第1 事案の概要:上告人は、役場に備え付けられていた公簿上の図面等の記載を根拠として、原審の事実認定に経験則違反があると主張した。しかし、原審は当該図面の記載を…
事件番号: 昭和30(オ)507 / 裁判年月日: 昭和32年10月31日 / 結論: 破棄差戻
書証の記載およびその体裁から、特段の事情のない限り、その記載どおりの事実を認めるべきである場合に、なんら首肯するに足る理由を示すことなくその書証を排斥するのは、理由不備の違法を免れない。
事件番号: 昭和33(オ)633 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の排斥理由を判決文に逐一記載する必要はなく、裁判所の専権に属する証拠の取捨判断及び事実認定に不合理がなければ適法である。 第1 事案の概要:本件土地の売買をめぐり、当事者間の契約が知事の許可を条件とする単純な売買契約であるか、それとも上告人が主張するような譲渡担保であるかが争われた。原審は、提…