判旨
証拠の排斥理由を判決文に逐一記載する必要はなく、裁判所の専権に属する証拠の取捨判断及び事実認定に不合理がなければ適法である。
問題の所在(論点)
判決において、採用しなかった証拠について逐一その理由を明示する必要があるか(理由不備の有無)。
規範
裁判所は、証拠の取捨選択及び事実の認定について専権を有し、証拠を排斥するに際してその理由をいちいち判示することを要しない。
重要事実
本件土地の売買をめぐり、当事者間の契約が知事の許可を条件とする単純な売買契約であるか、それとも上告人が主張するような譲渡担保であるかが争われた。原審は、提出された証拠に基づき、本件契約を単純な売買契約であると認定し、譲渡担保であるとの主張を排斥した。
あてはめ
原審が挙げた証拠に照らせば、本件契約が知事の許可を条件とする単純な売買契約であり、譲渡担保ではないとした認定は首肯できる。上告人の主張は、原審の認定に反する事実や独自の法的見解に基づき、裁判所の専権である事実認定を非難するものにすぎず、理由の不備や認定の誤りは認められない。
結論
証拠排斥の理由を逐一示さずとも、事実認定の手続きに違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
民事訴訟における事実認定の裁量を認める判例であり、理由不備(民訴法312条2項6号)の主張に対する反論として機能する。ただし、主要事実に直結する重要な証拠を排斥する場合は、理由の記載が全く不要とは解されないため、実務上は「経験則違反」等の有無が焦点となる点に注意を要する。
事件番号: 昭和30(オ)507 / 裁判年月日: 昭和32年10月31日 / 結論: 破棄差戻
書証の記載およびその体裁から、特段の事情のない限り、その記載どおりの事実を認めるべきである場合に、なんら首肯するに足る理由を示すことなくその書証を排斥するのは、理由不備の違法を免れない。
事件番号: 昭和33(オ)792 / 裁判年月日: 昭和36年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、証人の証言の一部を採用し、他の部分を措信しないという自由な評価を行うことが認められる。また、当事者の主張と供述が一貫している場合には、それに基づき事実を認定することが可能である。 第1 事案の概要:被上告人は、係争地を含む山林を買い受けたと主張していた。第一審および第二審において、証人D…
事件番号: 昭和32(オ)235 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の引渡しを受けた根拠が交換契約にあるとの主張について、立証が不十分であれば、当該契約に基づく占有の権原は認められない。事実認定に関する判断が判決の結論に影響しない事項である場合、上告理由は採用されない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告町との間で、町所有の土地(本件係争土地)と自己所有の土地…
事件番号: 昭和32(オ)1079 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が同一の証言の一部を採用し他を排斥する場合、判文上その区分が了知できれば足り、逐一内容を列記して明示したり排斥の理由を示したりする必要はない。 第1 事案の概要:上告人(合資会社A1およびA2株式会社)は、土地建物の所有権取得に関する原審の事実認定につき、証拠の取捨選択に不備があるとして上告…