官林図の測量基点の表示が不明で各定点間の方位・角度・距離の記載が不明確であるという理由だけで、係争地と酷似する形状を示す当該官林図をもつて係争地特定の証拠とすることができないとした判断には審理不尽の違法がある。
官林図が係争地特定の証拠とならないとする判断に審理不尽の違法があるとされた事例。
民訴法365条1項6号
判旨
土地の所有権確認訴訟において、証拠となる図面が判決主文に求められるような高度の正確精密性を欠く場合であっても、隣接地との位置関係や形状の類似性等から土地の特定が可能であれば、その証拠力を肯定すべきである。
問題の所在(論点)
所有権確認訴訟における土地の特定の証拠として、公図や官林図等の古い図面に対し、現代の測量技術に基づく判決主文と同等の正確精密性を要求すべきか。
規範
一定の地域の所有権確認の訴えにおける証拠書類について、判決主文に求められるような測量上の正確精密性(基点・方位・角度・距離の厳密な表示)を具備しなければ当該土地を特定しえないと解するのは相当ではない。周辺の地番、地形、既存の施設との位置関係や形状の酷似性といった諸要素に照らし、実質的な同一性が認められるならば、証拠としての特定力は認められるべきである。
重要事実
上告人が、本件係争地を合筆前の旧地番の土地の一部であり自己の所有に属すると主張し、その証拠として官林図(写し)を提出した事案。原審は、当該図面の測量起点が不明で、方位・角度・距離の記載を欠き、判決添付図面のような正確精密性を備えていないことを理由に、本件係争地を特定しうる証拠ではないとして上告人の請求を排斥した。
あてはめ
本件官林図は、測量上の厳密な数値記載は欠くものの、2500分の1の縮尺で作成され、隣接地番や墓所の位置が記載されている。また、係争地と隣接地との凹凸の状況が、別途成立に争いのない「社寺境内実測図」や上告人が訴訟用に作成した測量図の形状と非常に酷似している。このような周囲の状況や形状の合致からすれば、官林図によって本件係争地は十分に特定可能というべきである。原審のように、証拠書類に対してまで不能を強いるような過度の正確性を求めるのは、証拠力の評価を誤ったものといえる。
結論
原判決には重要な証拠の判断を誤り、審理を尽くさなかった違法がある。したがって、原判決を破棄し、本件係争地が国有地に属するか等の要件事実をさらに審理させるため、原審に差し戻す。
実務上の射程
境界確定訴訟や土地所有権確認訴訟において、明治期の公図等の証拠能力・証拠価値を検討する際の指針となる。形式的な正確性の欠如のみで直ちに証拠から排除せず、周辺状況との整合性による「実質的な特定」を認める実務上の柔軟な態度を示したものとして重要である。
事件番号: 昭和32(オ)406 / 裁判年月日: 昭和34年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】役場備付の公簿上の図面等であっても、他の証拠に照らしてその記載が真実と認め難い場合には、裁判所はこれを証拠として採用しないことができる。 第1 事案の概要:上告人は、役場に備え付けられていた公簿上の図面等の記載を根拠として、原審の事実認定に経験則違反があると主張した。しかし、原審は当該図面の記載を…
事件番号: 昭和30(オ)507 / 裁判年月日: 昭和32年10月31日 / 結論: 破棄差戻
書証の記載およびその体裁から、特段の事情のない限り、その記載どおりの事実を認めるべきである場合に、なんら首肯するに足る理由を示すことなくその書証を排斥するのは、理由不備の違法を免れない。
事件番号: 昭和39(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和40年11月16日 / 結論: 棄却
売買契約解除の場合に割賦支払済代金は売主において没収する特約があつたとの原告主張を被告が否認する旨主張しているからといつて、原告の原状回復請求に対し、支払済代金の返還をもつて同時履行の抗弁を提出したものとは解されない。