判旨
公文書である図面に記載された境界線であっても、裁判所における事実認定において絶対的な証拠力を有するものではなく、他の的確な証拠によりその記載の誤りを認めることが可能である。
問題の所在(論点)
民事訴訟における公文書(特に土地図面)の証拠力の性質、および裁判所が公文書の記載内容と異なる事実を認定することの可否が問題となる。
規範
公文書であっても、土地の境界等を示す図面は、裁判上の認定を拘束する絶対的証拠力を有するものではない。したがって、裁判所は自由心証に基づき、他の的確な証拠によって当該図面の記載内容と異なる事実を認定することができる。
重要事実
本件土地の境界確定にあたり、公文書である甲号証(図面)が提出された。しかし、原審は他の証拠を総合して境界線を認定し、当該図面の記載内容を排斥した。これに対し、上告人は公文書である図面の証拠力を否定した原審の判断には違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件図面は公文書としての性質を有するものの、その記載内容が真実であることを絶対的に保障するものではない。原判決が挙示した他の的確な証拠に照らせば、本件土地の境界線に関する認定は合理的であり、当該図面の記載を上回る証明力があるといえる。したがって、図面と異なる境界線を認定した原審の判断に違法はない。
結論
公文書である図面には絶対的証拠力はなく、他の証拠によりその記載と異なる境界を認定することは許容される。
実務上の射程
公文書の証拠力(民事訴訟法228条2項)に関する規範として機能する。形式的証拠力が認められても、実質的証拠力(証明力)は裁判官の自由心証に委ねられることを示す典型例であり、境界確定訴訟や所有権確認訴訟において図面の正確性を争う際の論拠となる。
事件番号: 昭和36(オ)724 / 裁判年月日: 昭和38年8月27日 / 結論: 棄却
山林の字図の記載と異なる事実認定をしても理由不備の違法、経験則違反は生じない。
事件番号: 昭和31(オ)761 / 裁判年月日: 昭和33年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公的な図面(字限図)について有効になされた訂正であっても、その訂正が客観的な事実に符合するか否かは裁判所の自由な心証に委ねられており、裁判所が当該訂正後の内容を事実認定の資料として採用しないことも許容される。 第1 事案の概要:上告人は、土地の境界等に関する主張の根拠として、有効に訂正された字限図…
事件番号: 昭和32(オ)406 / 裁判年月日: 昭和34年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】役場備付の公簿上の図面等であっても、他の証拠に照らしてその記載が真実と認め難い場合には、裁判所はこれを証拠として採用しないことができる。 第1 事案の概要:上告人は、役場に備え付けられていた公簿上の図面等の記載を根拠として、原審の事実認定に経験則違反があると主張した。しかし、原審は当該図面の記載を…