判旨
公的な図面(字限図)について有効になされた訂正であっても、その訂正が客観的な事実に符合するか否かは裁判所の自由な心証に委ねられており、裁判所が当該訂正後の内容を事実認定の資料として採用しないことも許容される。
問題の所在(論点)
有効に訂正された公的図面(字限図)について、裁判所がその訂正内容を事実に反するものとして、事実認定の資料から排除することの可否。
規範
字限図等の図面について、手続上の有効な訂正がなされた事実と、その訂正内容が客観的事実に符合するか否かは別個の問題である。裁判所は、自由心証主義に基づき、有効に行われた訂正であっても、証拠調べの結果に基づき当該訂正が事実に符合しないと判断し、これを事実認定の資料として採用しないことができる。
重要事実
上告人は、土地の境界等に関する主張の根拠として、有効に訂正された字限図(甲第6号証)を提出した。しかし、原審(控訴審)は、当該訂正後の字限図があるからといって直ちにその内容を事実として認めることはせず、他の諸事情に照らして、当該訂正が事実に符合しないとして事実認定の資料になし難いと判断した。これに対し上告人が、有効な訂正を否定する原判決には違法があるとして上告した事案である。
あてはめ
本件において、甲第6号証としての字限図の訂正自体は有効に行われたものと認められる。しかし、手続上の有効性と内容の真実性は別個の次元の問題である。原審が、判示の理由により当該訂正が事実に符合しないと判断し、認定を覆すに足りる証拠ではないとした判断は、証拠の評価に関する裁判所の合理的な裁量の範囲内にあるといえる。したがって、有効な訂正であることを前提としつつ、その証明力を否定した原判決の論理構成に誤りはない。
結論
裁判所は、有効に行われた字限図の訂正であっても、その訂正が事実に符合しないとの判断をなすことを妨げられない。したがって、訂正後の字限図を事実認定の資料としなかった原判決は正当である。
実務上の射程
自由心証主義(民事訴訟法247条)の帰結として、公的手続によって確定または訂正された図面であっても、民事訴訟における事実認定において裁判所を絶対的に拘束するものではないことを示す。境界確定訴訟や所有権確認訴訟において、公的な図面内容と実態が乖離している場合の主張立証の指針となる。
事件番号: 昭和32(オ)793 / 裁判年月日: 昭和36年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公文書である図面に記載された境界線であっても、裁判所における事実認定において絶対的な証拠力を有するものではなく、他の的確な証拠によりその記載の誤りを認めることが可能である。 第1 事案の概要:本件土地の境界確定にあたり、公文書である甲号証(図面)が提出された。しかし、原審は他の証拠を総合して境界線…
事件番号: 昭和33(オ)484 / 裁判年月日: 昭和36年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の時効取得の要件として、当該不動産が「他人の物」であることを判示する必要はあるが、その所有者が特定の誰であるかまでを確定する必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が本件不動産の特定の前所有者についての判定を誤ったと主張し、時効取得の成否を争った。原審は、本件不動産が被上告人(時効取得…