判旨
複数の公図の間に相違がある場合、いずれの証拠を信じ、いずれを排斥するかは裁判所の自由な合理的な裁量に属する。また、排斥する証拠について詳細な理由を判示しなかったとしても、特段の事情がない限り理由不備の違法とはならない。
問題の所在(論点)
内容が相互に異なる複数の公図が証拠として提出された場合に、裁判所がその中から特定の公図を選択し、他を排斥するにあたって、排斥の理由を詳細に判示する必要があるか(証拠取捨選択の自由と理由不備の有無)。
規範
事実の認定、証拠の取捨選択は、原則として事実審裁判所の自由な合理的な裁量に委ねられる(自由心証主義)。複数の証拠間に矛盾や相違がある場合、そのいずれを措信し、いずれを排斥するかを決定するにあたり、排斥する証拠についての詳細な説示を要するものではない。
重要事実
上告人は、甲二号証、甲五号証、甲八号証という三種類の公図を提出したが、これらの公図は互いに内容が多少ずつ相違していた。原審は、これらの中から甲八号証を事実認定の資料として採用し、甲五号証については事実認定を覆すに足りないと判断して排斥した。
あてはめ
本件において、三つの公図に相違があることは認められるが、そのいずれを証拠として採用するかは原審の裁量権の範囲内である。原判決は甲八号証を証拠として採用した上で、甲五号証ではその認定を覆せない旨を示しており、排斥する証拠についてそれ以上の詳細な理由を述べる必要はない。したがって、判決に理由不備等の違法は認められない。
結論
本件上告は棄却される。証拠の取捨判断は裁判所の自由な裁量に属し、原審の判断に不合理な点はなく、適法である。
実務上の射程
民事訴訟における自由心証主義(民訴法247条)の原則を確認する判例である。答案上は、事実認定の不合理を主張する場面において、裁判所の広範な証拠選択の裁量を説明する際の根拠として活用できる。特に、提出された書証間に齟齬がある場合でも、裁判所が合理的にその一方を選択している限り、判決理由として十分であることを示す基準となる。
事件番号: 昭和31(オ)761 / 裁判年月日: 昭和33年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公的な図面(字限図)について有効になされた訂正であっても、その訂正が客観的な事実に符合するか否かは裁判所の自由な心証に委ねられており、裁判所が当該訂正後の内容を事実認定の資料として採用しないことも許容される。 第1 事案の概要:上告人は、土地の境界等に関する主張の根拠として、有効に訂正された字限図…