土地境界確定事件の判決の事実摘示には、当事者がその境界線の主張を理由づけるためにした事実関係の陳述を遂一記載しなければならないものではない。
土地境界確定事件の判決の事実摘示の記載の程度。
民訴法191条1項,民訴法191条2項
判旨
土地境界確定の訴えにおいて、裁判所は当事者の主張する境界線に拘束されず、証拠に基づき適正な境界を画定すべきであり、当事者の具体的陳述を全て判決書に摘示しなくても理由不備の違法はない。
問題の所在(論点)
境界確定訴訟において、当事者が主張する境界線の根拠となる具体的な陳述を判決書に摘示しなかったこと、およびそれらに対して個別の判断を示さなかったことが、理由不備(民事訴訟法旧395条1項6号、現312条2項6号)に当たるか。
規範
境界確定訴訟は、公法上の境界を確定する形式的形成訴訟としての性質を有し、裁判所は当事者の主張に拘束されることなく、独自の証拠調べ及び事実認定に基づき適正な境界を画定する権限を有する。したがって、当事者の主張が排斥される場合であっても、その主張の根拠となる事実関係の陳述をいちいち判決書に摘示し、個別に判断を示す必要はない。
重要事実
本件は山林の境界確定を求めた訴訟である。上告人らは、自身が主張する境界線の正当性を理由付けるために一定の事実関係を陳述したが、原審はその陳述を判決書の事実欄に摘示しなかった。また、原審は証拠に基づき、上告人らの主張とは異なる線を境界と認定し、上告人らの主張を「採用に足りる証拠がない」として一括して排斥した。これに対し上告人らが、事実の不摘示による理由不備および判断遺脱を理由に上告した事案である。
事件番号: 昭和37(オ)490 / 裁判年月日: 昭和39年4月17日 / 結論: 棄却
境界確定の訴における請求は、不明な境界を確定することを求める点にあり、いずれの線が本来の境界であるかに関する当事者の主張は、ただ事実上の申述の一部にすぎない。
あてはめ
原審は、挙示された証拠及び認定した諸般の事実関係を総合して、独自の境界線を認定している。この過程において、上告人らが提出した全資料を検討した上で、前認定を排斥するに足りる証拠はないと判示しており、これは上告人らの主張を実質的に検討し、排斥したものと解される。境界確定訴訟の性質上、裁判所は適正な境界を画定する責務を負うのであり、当事者の主張を理由付ける個々の事実関係の陳述を全て判決書に摘示しなくても、認定の過程が合理的であれば、理由不備や判断遺脱の違法があるとはいえない。
結論
原審の判断に違法はなく、判決書に当事者の陳述を逐一摘示しなかったとしても理由不備には当たらない。上告棄却。
実務上の射程
境界確定訴訟における裁判所の非拘束性と、事実認定における裁量を認めた判例である。答案上は、本件が「形式的形成訴訟」であることに触れ、処分権主義が適用されない結果として、裁判所の職権探知的・裁量的判断が広く認められる根拠として活用すべきである。
事件番号: 昭和37(オ)453 / 裁判年月日: 昭和39年9月18日 / 結論: 棄却
係争地に境界を画する自然の地勢地物が全く存せず、その境界を客観的に知ることができない場合においては、裁判所は、審理に現れたすべての事情を考慮して妥当とする境界を確定しても違法ではない。