係争地に境界を画する自然の地勢地物が全く存せず、その境界を客観的に知ることができない場合においては、裁判所は、審理に現れたすべての事情を考慮して妥当とする境界を確定しても違法ではない。
境界確定の基準。
民訴法225条
判旨
公法上の境界(筆界)確定訴訟において、登記簿上の面積と実測面積に著しい乖離があり、植林等の支配関係や自然の地勢による境界の特定も困難な場合には、審理に現れた一切の事情を総合考慮して境界を確定すべきである。
問題の所在(論点)
境界を画定するための直接的な証拠(登記簿の面積、占有事実、地勢地物)が乏しく、客観的な境界の特定が困難な場合に、どのような基準で境界を確定すべきか。
規範
境界確定訴訟(筆界確定訴訟)においては、登記簿の記載、実測面積、占有状況、自然の地勢、地物等の客観的証拠に基づき判断する。もっとも、これらの資料によっても直接的に境界が判明しない場合には、裁判所は審理に現れたすべての事情を総合的に考慮して、合目的的に境界を確定すべきである。
重要事実
上告人と相手方は隣接する山林の所有者であり、その境界の確定を争った。登記簿上、当該地域の分割された各山林(本件山林を含む)の面積はいずれも「二反九畝一五歩」と記載されていたが、実測面積は「三町一反」から「二反一畝」まで著しく異なっていた。上告人は、自己の先代が主張する境界線に沿って植林した事実を支配関係の根拠としたが、原審はその事実を認めなかった。また、係争地内部には境界を画する自然の地勢や地物も全く存在しなかった。
あてはめ
まず、登記簿上の面積と実測面積が著しく異なる本件では、面積の均等性を前提とした境界確定は採用できない。次に、上告人が主張する植林の事実は証拠上認められず、支配関係による境界の推認も困難である。さらに、自然の地勢や地物による区別も不可能である。このような状況下では、特定の指標に依拠することはできず、原審が「審理に現われたすべての事情を考慮」して境界を判断したことは、合理的な裁量の範囲内として首肯できる。
結論
本件両山林の境界は、審理に現れた一切の事情を考慮して導き出された原判決主文の通りに確定されるべきであり、上告を棄却する。
実務上の射程
境界確定訴訟は形式的形成訴訟であり、裁判所は当事者の主張に拘束されず、独自の判断で適正な境界を定める義務がある。本判決は、明確な証拠がない場合の「総合考慮」の手法を是認したものであり、実務上、特定の決め手がない場合の最終的な判断枠組みとして活用できる。ただし、答案上はまず地籍図や占有実態といった具体的客観的要素の検討を先行させ、それらが機能しない場合の補充的判断手法として位置づけるべきである。
事件番号: 昭和37(オ)403 / 裁判年月日: 昭和37年9月28日 / 結論: 棄却
土地境界確定訴訟において、分筆図は一の証拠資料にすぎず、それのみが唯一の資料ではない。