境界確定訴訟の控訴裁判所は、第一審判決の定めた境界線を正当でないと認めたときは、第一審判決を変更して、正当と判断する線を境界と定めるべきのものであり、その結果が実際上控訴人にとり不利であり、附帯控訴をしない被控訴人に有利である場合であつても、いわゆる不利益変更禁止の原則の適用はないものと解すべきである。
境界確定訴訟の控訴審と不利益変更禁止の原則。
民訴法385条
判旨
境界確定訴訟において、裁判所は当事者の主張に拘束されず、客観的に正当な境界線を画定すべきであり、処分権主義や不利益変更禁止の原則は適用されない。
問題の所在(論点)
境界確定訴訟において、裁判所が当事者の主張外の境界を画定すること(処分権主義)や、控訴審において控訴人に不利益な境界へ変更すること(不利益変更禁止の原則)が許されるか。
規範
境界確定訴訟は、公法上の境界を画定する性質を有するため、裁判所は当事者の主張に拘束されることなく、自ら正当と認める境界線を画定すべきである。したがって、当事者の主張しない境界線を確定しても処分権主義(民訴法147条、旧186条)に違反しない。また、控訴審において第1審判決の境界が不当であると認めたときは、附帯控訴がない場合であっても、第1審判決を変更して正当な境界を定めるべきであり、その結果が控訴人に不利であっても不利益変更禁止の原則(民訴法304条)は適用されない。
重要事実
上告人(本訴原告・控訴人)が被上告人(本訴被告・被控訴人)に対し、土地の境界確認を求めて提訴した。第1審判決が一定の境界を画定したのに対し、上告人が不服を申し立てて控訴した。控訴審(原審)は、第1審とは異なる境界線が正当であると認めつつも、その線が第1審よりも被上告人に有利であり、かつ被上告人が附帯控訴を申し立てていないことを理由に、不利益変更を避けるためとして、第1審判決を維持し控訴を棄却した。
あてはめ
境界確定訴訟の性質上、裁判所は客観的な境界を知り得た場合にはこれに基づき、不明な場合でも妥当な線を見出して画定する義務を負う。本件において原審は、自ら証拠により第1審とは異なる境界線を認定しながら、被上告人の不服申立てがないことを理由に第1審判決を変更しなかった。しかし、境界確定には不利益変更禁止の原則の適用がないため、原審は自ら正当と認めた境界線に従って判決を書き換えるべきであった。したがって、原審の判断には理由不備および法の解釈誤りの違法がある。
結論
境界確定訴訟に不利益変更禁止の原則の適用はない。原判決のうち境界確定に関する部分を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
境界確定訴訟が「形式的形成訴訟」であることの帰結として、処分権主義の例外(主張外の認定)と不利益変更禁止の原則の適用除外を明確に示した重要判例である。答案上では、境界確定訴訟の特殊性を述べる際の必須の根拠となる。
事件番号: 昭和37(オ)600 / 裁判年月日: 昭和39年10月20日 / 結論: 棄却
境界確定訴訟にあつては、裁判所は当事者の主張に覊束されることなく、自らその正当と認めるところに従つて境界線を定めるべきものであり、その結果当事者の主張以上に有利な境界が確定されることになつても、民訴法第一八六条の規定に違反するものではない。
事件番号: 昭和37(オ)490 / 裁判年月日: 昭和39年4月17日 / 結論: 棄却
境界確定の訴における請求は、不明な境界を確定することを求める点にあり、いずれの線が本来の境界であるかに関する当事者の主張は、ただ事実上の申述の一部にすぎない。