境界確定訴訟にあつては、裁判所は当事者の主張に覊束されることなく、自らその正当と認めるところに従つて境界線を定めるべきものであり、その結果当事者の主張以上に有利な境界が確定されることになつても、民訴法第一八六条の規定に違反するものではない。
境界確定訴訟の判決と民訴法第一八六条。
民訴法186条
判旨
境界確定訴訟において、裁判所は当事者の主張に拘束されず、客観的境界を確定すべきであり、当事者の主張しない線を境界と定めても処分権主義に違反しない。
問題の所在(論点)
境界確定訴訟において、裁判所が当事者の主張する境界線以外の線を境界として確定することが、処分権主義(民事訴訟法第246条、旧186条)に違反するか。
規範
境界確定訴訟は、公法上の境界を画定する非訟事件的性質を有する。そのため、裁判所は当事者の主張する境界線に拘束(処分権主義)されることなく、自ら正当と認める境界線を定めるべきである。具体的には、客観的な境界を知り得る場合にはこれに基づき、不明な場合には常識に照らし最も妥当な線を見出して確定すべきである。したがって、当事者の主張しない境界線を確定しても、民事訴訟法上の処分権主義(現146条、旧186条)には反しない。
重要事実
上告人は、原審が認定した本件甲地と乙地の境界線(第七号標と鑑定人の測点Bを結ぶ線)について、自身が主張した境界線とは異なり、かつ当事者のいずれもが主張していない線であることを不服として上告した。上告人は、かかる認定が処分権主義に違反し、また証拠の取捨選択に誤りがあると主張した。
あてはめ
境界確定訴訟は、単なる私法上の所有権の範囲の確認ではなく、客観的に存在する不動産の地界を確定させる性質を持つ。本件において原審は、証拠関係や事実関係に基づき、本件の字境が本件土地分割前から客観的に存在していたと認定した。その上で、第七号標のある沢等の状況から、客観的に妥当と認められる線を境界として確定した。これは裁判所の合理的な裁量の範囲内であり、当事者の主張する範囲内であるか否かによって結論が左右されるものではない。したがって、当事者の主張と異なる境界線を確定した判断は適法である。
結論
境界確定訴訟において当事者の主張しない境界線を確定しても、処分権主義には違反しない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
境界確定訴訟が形式的形成訴訟(非訟事件的性質)であることを示すリーディングケースである。答案上は、通常の所有権確認訴訟(処分権主義の適用あり)との対比で記述する際に有用。特に「当事者の主張に拘束されない」という帰結は、申立棄却が許されない点や、不利益変更禁止の原則も適用されない点とセットで理解しておくべきである。
事件番号: 昭和37(オ)938 / 裁判年月日: 昭和38年10月15日 / 結論: その他
境界確定訴訟の控訴裁判所は、第一審判決の定めた境界線を正当でないと認めたときは、第一審判決を変更して、正当と判断する線を境界と定めるべきのものであり、その結果が実際上控訴人にとり不利であり、附帯控訴をしない被控訴人に有利である場合であつても、いわゆる不利益変更禁止の原則の適用はないものと解すべきである。
事件番号: 昭和37(オ)490 / 裁判年月日: 昭和39年4月17日 / 結論: 棄却
境界確定の訴における請求は、不明な境界を確定することを求める点にあり、いずれの線が本来の境界であるかに関する当事者の主張は、ただ事実上の申述の一部にすぎない。
事件番号: 昭和32(オ)356 / 裁判年月日: 昭和33年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が係争地の具体的地域を特定し、祖先伝来の所有地であると主張して所有権確認を求めている場合、当該土地につき請求を認容することは、処分権主義に反しない。 第1 事案の概要:被上告人は、第一審から本件係争地の具体的地域を明らかにしていた。その上で、原審において、当該土地は祖先伝来の所有地であると主…