判旨
当事者が係争地の具体的地域を特定し、祖先伝来の所有地であると主張して所有権確認を求めている場合、当該土地につき請求を認容することは、処分権主義に反しない。
問題の所在(論点)
当事者が特定の土地の範囲を示して所有権確認を求めている場合に、その範囲について認容判決を下すことが、旧民事訴訟法186条(現行民事訴訟法246条)の処分権主義に違反するか。
規範
裁判所は、当事者が申し立てていない事項について判決をすることができない(処分権主義)。しかし、当事者が訴訟の目的物たる特定の土地を具体的に示し、その所有権を主張している場合には、その特定の範囲について判決を下すことは、申立ての範囲内における判断であると解される。
重要事実
被上告人は、第一審から本件係争地の具体的地域を明らかにしていた。その上で、原審において、当該土地は祖先伝来の所有地であると主張して、所有権確認を求めた。これに対し、裁判所は被上告人の請求を認容する判決を下したが、上告人はこれが「申立てない事項についての判決」であると主張して上告した。
あてはめ
被上告人は訴訟において、係争地の具体的地域を特定して主張している。また、その権利の根拠として「祖先伝来の所有地」であることを明示し、所有権の確認を求めている。裁判所がこの主張に基づき、特定された範囲の土地について所有権を認めたことは、あくまで被上告人が求めた申立ての範囲内での判断であり、当事者の合理的な意思に合致する。したがって、申立て外の事項について判決したものとは認められない。
結論
本件土地につき被上告人の請求を認容したことは、処分権主義に反せず適法である。
実務上の射程
事件番号: 昭和28(オ)1042 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が判決の対象とする土地の範囲について、原告が口頭弁論(釈明)において具体的に範囲を特定し、被告もそれを前提に防御を尽くしている場合には、判決目録の記載が事実調査の結果等と相まって客観的に特定可能であれば、処分権主義に反しない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、ある山林(7反1畝歩)のう…
訴訟物の特定(民事訴訟法246条)に関する基本的事例。土地の所有権確認訴訟において、目的物が具体的に特定され、その範囲内で判決がなされる限り、処分権主義違反の問題は生じないことを確認する際に用いる。
事件番号: 昭和33(オ)792 / 裁判年月日: 昭和36年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、証人の証言の一部を採用し、他の部分を措信しないという自由な評価を行うことが認められる。また、当事者の主張と供述が一貫している場合には、それに基づき事実を認定することが可能である。 第1 事案の概要:被上告人は、係争地を含む山林を買い受けたと主張していた。第一審および第二審において、証人D…
事件番号: 昭和32(オ)406 / 裁判年月日: 昭和34年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】役場備付の公簿上の図面等であっても、他の証拠に照らしてその記載が真実と認め難い場合には、裁判所はこれを証拠として採用しないことができる。 第1 事案の概要:上告人は、役場に備え付けられていた公簿上の図面等の記載を根拠として、原審の事実認定に経験則違反があると主張した。しかし、原審は当該図面の記載を…
事件番号: 昭和33(オ)633 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の排斥理由を判決文に逐一記載する必要はなく、裁判所の専権に属する証拠の取捨判断及び事実認定に不合理がなければ適法である。 第1 事案の概要:本件土地の売買をめぐり、当事者間の契約が知事の許可を条件とする単純な売買契約であるか、それとも上告人が主張するような譲渡担保であるかが争われた。原審は、提…