公図によつて境界を確認することを原則としている慣習ないし慣習法の存在がないとされた事例。
判旨
境界確定の訴えにおいて、公図や公簿は絶対的な証拠力を有するものではなく、他の的確な証拠によりその記載に誤りがあることを認めることができる。また、境界確定の訴えの当事者は相隣地の所有権者であれば足り、相続等による所有権取得の対抗要件(登記)を備えている必要はない。
問題の所在(論点)
1. 境界確定の訴えにおいて公図は絶対的な証拠力を有するか。 2. 境界確定の訴えの当事者は、所有権取得について対抗要件(登記)を備えている必要があるか。
規範
1. 土地台帳附属の公図等の公簿は、境界確定において絶対的な証拠力を有するものではなく、証拠調べの結果に基づきその記載と異なる認定をすることを妨げない。 2. 境界確定の訴えの当事者は係争相隣地の所有権者であることを要するが、民法177条の「第三者」関係には立たないため、所有権取得について対抗要件(登記)を具備している必要はない。
重要事実
上告人と被上告人は、隣接する山林(1061番地の1と1063番地)の境界について争い、境界確定の訴えが提起された。上告人は、公図には絶対的証拠力があること、被上告人は相続取得した土地の登記を経ていないため所有権を対抗できないこと、山間部において他人所有地から引水することは地方慣習や衛生面からあり得ないこと等を主張して、原審の境界認定を不服とした。
あてはめ
1. 公図について:公図は登記制度等の資料にはなるが、実態と異なる可能性も否定できない。原審が提示された他の証拠(占有状態、地形地勢、検証結果等)を対比して公図を採用しなかったことは、証拠の取捨選択の範囲内であり適法である。 2. 経験則について:山間部で自己の土地に水源がない場合に他人所有地から引水することは、合理的な経験則として認められる。 3. 対抗要件について:境界確定の訴えは公法上の境界を判定するものであり、相隣地の所有権者であれば足りる。被上告人が相続登記未了であっても、上告人は所有権取得を否認し得る「第三者」には該当しない。
結論
公図に絶対的証拠力はなく、他の証拠による境界認定は適法である。また、境界確定の訴えにおいて登記の有無は当事者適格に影響しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
境界確定の訴えにおける証拠の評価(公図の相対化)と当事者適格に関する重要判例である。実務上、公図に依拠できない場合の判断材料として、占有状態や地勢、周辺の利用状況(引水関係等)が有力な証拠となることを示している。また、登記未了の相続人であっても当事者となり得る点を明言している。
事件番号: 昭和37(オ)403 / 裁判年月日: 昭和37年9月28日 / 結論: 棄却
土地境界確定訴訟において、分筆図は一の証拠資料にすぎず、それのみが唯一の資料ではない。