判旨
事実審において主張されていない事項を上告審で新たに主張することは許されず、時効取得の主張が原審でなされていない以上、判決に違法があるとはいえない。
問題の所在(論点)
事実審(原審)において一度も主張されなかった「取得時効」の成立を、上告審において新たに主張し、原判決の違法を争う理由とすることができるか。
規範
上告審は事後審であり、上告理由は事実審において提出された攻撃防御方法に基づく判断の是非を対象とする。したがって、事実審(控訴審以前)において主張されなかった新たな事実や法的構成を上告理由として主張することは認められない。
重要事実
上告人は、登記簿上の所有権等に基づき土地の権利変動を主張したが、原審は証拠により係争地域を被上告人の所有地と確定し、上告人の主張を退けた。上告人は、上告審に至り新たに取得時効の成立を主張して、原判決の違法を訴えた。
あてはめ
本件において、上告人が主張する「取得時効」については、原審の審理過程において一切主張がなされていないことが記録上明らかである。原審において主張されていない以上、原審が時効について審理判断しなかったことに何ら法的な瑕疵はなく、これを理由に原判決を非難することはできない。
結論
原審で主張されていない取得時効を上告審で主張することは認められない。本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
民事訴訟における「適時提出の原則」および上告審の性質を示す。答案上は、失権効や上告理由の制限を論じる際の基礎となる。事案の審理が事実審で尽くされていることを前提に、後出しの主張を封じる実務上の基本原則を確認する際に引用する。
事件番号: 昭和32(ヤ)30 / 裁判年月日: 昭和33年5月24日 / 結論: 却下
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