判旨
再審事由としての判断遺脱(旧民訴法420条1項9号、現行338条1項9号)は、確定判決において当事者が主張した重要な攻撃防御方法について判断を示さなかった場合に認められるが、上告審が原判決の事実認定に違法がない旨を判示した場合には、判断遺脱は認められない。
問題の所在(論点)
上告審において原判決の事実認定の妥当性を検討・肯定した場合に、なお再審事由(旧民訴法420条1項9号、現行338条1項9号)としての「判断遺脱」が認められるか。
規範
再審事由としての「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱したこと」とは、当事者が判決の基礎となるべき事実につき提出した攻撃防御方法であって、判決の結果に影響を及ぼす可能性のあるものに対し、判決の理由中で何ら判断を示さないことをいう。上告審において、原判決の事実認定の過程に違法がないことを自ら判断し、上告理由を排斥している場合には、当該事実認定に関する主張に対する判断遺脱は存在しないものと解される。
重要事実
再審原告は、本件山林の所有権確認を求めて提訴したが、原控訴審は乙第1号証等の証拠に基づき、昭和25年に負担付贈与契約が成立し再審被告に所有権が移転した事実を認定し、請求を棄却した。再審原告はこれを不服として、証拠に依らない認定や実験則違反等の違法がある旨を主張して上告したが、最高裁判所(原上告判決)は、控訴審の認定・判断を首肯できるとして上告を棄却した。これに対し、再審原告は原上告判決に判断遺脱があるとして再審の訴えを提起した。
あてはめ
原上告判決の判文によれば、裁判所は控訴判決が挙げた関係証拠によって乙1号証の成立を認めるに十分であり、その他の証拠資料を総合しても控訴判決の認定・判断は首肯できると明示している。これは、上告理由で指摘された証拠によらない認定や審理不尽等の違法が存在しないことを自ら判断したことに他ならない。したがって、再審原告が主張する事由について判断を示していない事実はなく、判決に影響を及ぼすべき判断の遺脱は認められない。
結論
本件再審の訴えには再審事由が認められないため、却下する。
事件番号: 昭和32(ヤ)25 / 裁判年月日: 昭和34年4月23日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】上告裁判所は不服申立ての限度でのみ調査義務を負うため、上告理由として主張されていない事項や、適法な期間経過後に提出された補充書記載の事項について判断を示さなくとも、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱(民事訴訟法第338条1項9号)には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、前審の上告判…
実務上の射程
本判決は再審事由としての判断遺脱の存否を論じる際、上告審の既判力的機能を考慮した判断枠組みを示している。答案上は、再審事由の存否が問われる場面で、判決理由中に主張に対する応答(排斥の論理)が実質的に含まれているかを確認するための判断指標として活用できる。特に上告審判決に対する再審請求においては、上告理由への回答が実質的になされている限り、判断遺脱を認めることは困難であるという論法として有効である。
事件番号: 昭和32(オ)4 / 裁判年月日: 昭和36年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実審において主張されていない事項を上告審で新たに主張することは許されず、時効取得の主張が原審でなされていない以上、判決に違法があるとはいえない。 第1 事案の概要:上告人は、登記簿上の所有権等に基づき土地の権利変動を主張したが、原審は証拠により係争地域を被上告人の所有地と確定し、上告人の主張を退…
事件番号: 昭和37(オ)181 / 裁判年月日: 昭和38年7月11日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第一項但書の「当事者」とは、当事者の訴訟代理人を含むものと解すべきである。
事件番号: 昭和33(ヤ)22 / 裁判年月日: 昭和34年6月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審事由としての「判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したこと」(民訴法338条1項10号)の成否について、上告審判決が上告理由に対し、独自の理由に基づき上告を採用し得ない理由を説示している場合には、判断遺脱の違法は認められない。 第1 事案の概要:再審原告は、上告審判決が、控訴審判決…