判旨
上告裁判所は不服申立ての限度でのみ調査義務を負うため、上告理由として主張されていない事項や、適法な期間経過後に提出された補充書記載の事項について判断を示さなくとも、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱(民事訴訟法第338条1項9号)には当たらない。
問題の所在(論点)
上告審において、上告理由で明示されていない事項や期間経過後に提出された書面による主張に対して判断を示さなかった場合、民事訴訟法上の「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱したとき」(現行338条1項9号)の再審事由に該当するか。
規範
上告裁判所は、上告理由に基づき不服申立ての限度においてのみ調査をなせば足りる。したがって、上告理由として明確に示されていない事項や、法定の期間経過後に提出された不適法な上告理由釈明補充書に記載された事項について判決で言及しなかったとしても、判断の遺脱があるとはいえない。
重要事実
再審原告は、前審の上告判決において主張したはずの事項について判断が示されなかったとして、判断遺脱を理由に再審の訴えを提起した。しかし、当該事項は当初の上告理由において必ずしも判断を求めたものとは認められず、また一部の事項については、民事訴訟法上の法定期間を経過した後に提出された「上告理由釈明補充書」に記載されていたものであった。
あてはめ
まず、上告審の調査範囲は上告理由による不服申立ての限度に限られる(民訴法402条参照)。本件で問題となった点は、当初の上告理由において裁判所の判断を求めたものとは認められないため、これに言及しないことは当然である。次に、期間経過後に提出された補充書は不適法な書面である。不適法な書面記載の事項に対し判断を示さないこともまた正当であり、いずれも判断遺脱には当たらないと解される。
結論
本件再審の訴えには再審事由が認められず、不適法であるため却下される。
事件番号: 昭和33(オ)272 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審事由である「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱したこと」(民訴法338条1項9号)とは、当事者の主張があるにもかかわらず判断を脱漏した場合を指し、当事者の主張がない事項については判断遺脱に当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、福岡地裁昭和30年(ワ)第917号の確定判決に対…
実務上の射程
再審事由としての「判断遺脱」の範囲を画定する際、上告審の構造(書面審理・理由拘束性)からその限界を示した判例である。答案上は、再審の訴えの適法性を論じる文脈で、不適法な主張や主張自体がない事項についての判断不要性を指摘する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和32(ヤ)30 / 裁判年月日: 昭和33年5月24日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審事由としての判断遺脱(旧民訴法420条1項9号、現行338条1項9号)は、確定判決において当事者が主張した重要な攻撃防御方法について判断を示さなかった場合に認められるが、上告審が原判決の事実認定に違法がない旨を判示した場合には、判断遺脱は認められない。 第1 事案の概要:再審原告は、本件山林の…
事件番号: 昭和32(ヤ)7 / 裁判年月日: 昭和32年12月20日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えにおいて、主張される事実が民事訴訟法(旧法)420条1項所定の再審事由のいずれにも該当しない場合には、当該再審の訴えは不適法として却下される。 第1 事案の概要:再審原告は、最高裁判所の確定判決に対し、別紙記載(本判決文上は省略)の事由を根拠として再審の訴えを提起した。再審原告が主張した…
事件番号: 昭和33(ヤ)22 / 裁判年月日: 昭和34年6月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審事由としての「判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したこと」(民訴法338条1項10号)の成否について、上告審判決が上告理由に対し、独自の理由に基づき上告を採用し得ない理由を説示している場合には、判断遺脱の違法は認められない。 第1 事案の概要:再審原告は、上告審判決が、控訴審判決…
事件番号: 昭和44(オ)793 / 裁判年月日: 昭和45年10月9日 / 結論: 棄却
確定判決の証拠となつた証言について偽証罪の起訴猶予処分があつたため、民訴法四二〇条一項七号に基づいて再審の訴が提起された場合においては、再審裁判所は、右起訴猶予処分の当否を問うことなく、同条二項の要件を具備したものとしてさらに再審事由の有無について判断すべきであるが、再審事由の有無自体については右処分の判断に拘束されな…