確定判決の証拠となつた証言について偽証罪の起訴猶予処分があつたため、民訴法四二〇条一項七号に基づいて再審の訴が提起された場合においては、再審裁判所は、右起訴猶予処分の当否を問うことなく、同条二項の要件を具備したものとしてさらに再審事由の有無について判断すべきであるが、再審事由の有無自体については右処分の判断に拘束されない。
確定判決の証拠となつた証言について偽証罪の起訴猶予処分があつたことを主張して再審の訴を提起した場合と右起訴猶予処分の判断の再審裁判所に対する拘束性
民訴法420条1項7号,民訴法2項
判旨
民訴法338条2項にいう有罪の確定判決等が得られない場合の適法要件として起訴猶予処分が含まれるが、再審裁判所はその判断内容に拘束されず、再審事由の存否を独自に認定できる。
問題の所在(論点)
検察官による起訴猶予処分がある場合、民訴法338条2項(旧420条2項)の適法要件を満たすか。また、適法要件を満たすとして、再審裁判所は当該処分の判断内容(証言の虚偽性等)に拘束されずに再審事由の存否を判断できるか。
規範
民訴法338条2項(旧420条2項)が、同条1項4号ないし7号の事由による再審の訴えに対し有罪の確定判決等を要するとしたのは、再審事由の存在が顕著な場合に限定して濫訴を防止する趣旨である。したがって、起訴猶予処分があれば同条2項の適法要件を具備する。しかし、再審裁判所は主張された再審事由の存否を判断するにあたり、当該処分の判断内容に拘束されず、独自の審理判断を行うことができる。
重要事実
本件再審の対象となった確定判決の基礎には、特定の証言があった。この証言について偽証の嫌疑がかけられたが、検察官はこれを起訴猶予処分とした。上告人は、この起訴猶予処分を根拠として、民訴法338条1項7号(旧420条1項7号)の再審事由(証人の虚偽の陳述)があるものと主張して再審の訴えを提起した。
事件番号: 昭和40(オ)423 / 裁判年月日: 昭和41年9月6日 / 結論: 棄却
起訴猶予処分は民訴法第四二〇条第二項後段にいう有罪の確定判決を得られない場合にあたる。
あてはめ
まず、本件証言について起訴猶予処分がなされているため、民訴法338条2項の適法要件は具備されており、再審の訴え自体は適法である。しかし、再審裁判所は、起訴猶予処分がなされたという事実を前提に再審事由の有無を審理する際、処分の内容に縛られる必要はない。原審が証拠に照らし、当該証言が偽証ではなく書証も虚偽ではないと認定したことは、独自の判断として許容される。これにより再審事由が存在しないと判断した結論は正当である。
結論
再審の訴えは適法要件を満たすが、独自の認定により再審事由の存在が否定されるため、請求は失当として棄却される。
実務上の射程
再審の訴えの適法性(門前払い)と、実体的な再審事由の存否(本案判断)を明確に区別する基準として機能する。答案上は、338条2項の「有罪の確定判決」に代わる要件として起訴猶予を肯定した上で、その後の本案審理における裁判所の自由心証を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和46(オ)1105 / 裁判年月日: 昭和47年4月28日 / 結論: 棄却
被上告人を被告とする訴訟において、被上告人の妻がその訴状、期日呼出状を毀棄し、判決正本を隠匿したため、被上告人がその訴訟の係属およびその進行についてなんら知るところなく欠席のまま判決を受け、同判決が確定したなど、判示の事情のもとにおいては、民訴法四二〇条一項五号の再審事由があるものというべきである。
事件番号: 昭和32(ヤ)25 / 裁判年月日: 昭和34年4月23日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】上告裁判所は不服申立ての限度でのみ調査義務を負うため、上告理由として主張されていない事項や、適法な期間経過後に提出された補充書記載の事項について判断を示さなくとも、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱(民事訴訟法第338条1項9号)には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、前審の上告判…
事件番号: 昭和39(オ)1374 / 裁判年月日: 昭和42年6月20日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第二項後段により再審請求するには、有罪の確定判決を得る可能性があるのに、被疑者が死亡したり、公訴権が時効消滅したり、あるいは起訴猶予処分をうけたりして有罪の確定判決をえられなかつたことを証明することを要する。
事件番号: 昭和42(オ)702 / 裁判年月日: 昭和43年2月20日 / 結論: 棄却
背任罪の時効完成による不起訴処分が民訴法第四二〇条第二項の要件をみたすためには、さらに公訴権が時効により消滅しなかつたならば有罪の確定判決がえられたであろうと認めるに足りる事実が証明されなければならない。