起訴猶予処分は民訴法第四二〇条第二項後段にいう有罪の確定判決を得られない場合にあたる。
起訴猶予処分と民訴法第四二〇条第二項後段
民訴法420条
判旨
起訴猶予処分は、実務上その後に改めて起訴されないのが通例であるから、民訴法第338条第2項にいう「証拠を欠くために確定判決を得ることができないとき」に該当し、当該処分の存在を知った時から再審提起期間が進行する。
問題の所在(論点)
刑事上の罪となるべき他人の行為を理由に再審を請求する場合において、起訴猶予処分がなされたことが、民訴法第338条第2項(旧420条2項)にいう「確定判決を得ることができないとき」に該当するか。また、その事実を知った時から再審提起期間が進行するか。
規範
民訴法第338条第2項(旧420条2項)にいう「証拠を欠くために確定判決を得ることができないとき」とは、被疑者の死亡等により絶対的に有罪判決を得る可能性がない場合に限られない。起訴猶予処分についても、一旦なされれば特別の事情がない限り事後に改めて起訴されないのが通例であるから、同項に該当し、再審の訴えの提起が可能となる。したがって、再審提起期間(同法342条1項、旧424条1項)は、当該処分があったことを知った時から進行する。
重要事実
上告人は、再審事由(旧民訴法420条1項各号)に該当する刑事罰の対象となるべき行為があったと主張し、再審の訴えを提起した。しかし、当該行為について刑事の確定判決が得られていなかったため、同条2項後段(現338条2項)の「確定判決を得ることができないとき」に該当するかが争点となった。上告人は、起訴猶予処分を受けていたが、起訴猶予は一応の処分であり将来の起訴の可能性が否定されないため、これを知っただけでは再審提起期間は進行しないと主張して、期間徒過を理由に却下した原判決の不当を訴えた。
事件番号: 昭和44(オ)793 / 裁判年月日: 昭和45年10月9日 / 結論: 棄却
確定判決の証拠となつた証言について偽証罪の起訴猶予処分があつたため、民訴法四二〇条一項七号に基づいて再審の訴が提起された場合においては、再審裁判所は、右起訴猶予処分の当否を問うことなく、同条二項の要件を具備したものとしてさらに再審事由の有無について判断すべきであるが、再審事由の有無自体については右処分の判断に拘束されな…
あてはめ
起訴猶予処分は一事不再理の効力を生じないため、法律上は事後に起訴することを妨げない。しかし、実務上は一旦起訴猶予処分がなされると、格別の事情がない限り改めて起訴されないのが通例である。したがって、起訴猶予処分がなされた時点で、事実上「確定判決を得ることができない」状態に至ったものと評価できる。公訴時効が完成するまで有罪判決の可能性が皆無とはいえないとしても、この通例に照らせば、当該処分の認識をもって再審提起期間の起算点とすべきである。なお、万一その後に有罪判決が得られた場合には、別途同条1項前段を理由に再審を提起すれば足りる。
結論
起訴猶予処分があったことを知った時から再審提起期間は進行する。したがって、期間徒過後に提起された本件再審の訴えを却下した原判決は正当である。
実務上の射程
再審事由となる刑事上の他人の行為について、起訴猶予処分という検察官の終局的判断が出された場合、民訴法338条2項の要件を充足し、再審提起期間が走り始めることを明示した。判決を得られない「不可能性」を物理的・絶対的なものに限定せず、社会通念上の蓋然性をもって判断している点に特徴がある。
事件番号: 昭和39(オ)1374 / 裁判年月日: 昭和42年6月20日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第二項後段により再審請求するには、有罪の確定判決を得る可能性があるのに、被疑者が死亡したり、公訴権が時効消滅したり、あるいは起訴猶予処分をうけたりして有罪の確定判決をえられなかつたことを証明することを要する。
事件番号: 昭和32(ヤ)25 / 裁判年月日: 昭和34年4月23日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】上告裁判所は不服申立ての限度でのみ調査義務を負うため、上告理由として主張されていない事項や、適法な期間経過後に提出された補充書記載の事項について判断を示さなくとも、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱(民事訴訟法第338条1項9号)には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、前審の上告判…
事件番号: 昭和46(オ)1105 / 裁判年月日: 昭和47年4月28日 / 結論: 棄却
被上告人を被告とする訴訟において、被上告人の妻がその訴状、期日呼出状を毀棄し、判決正本を隠匿したため、被上告人がその訴訟の係属およびその進行についてなんら知るところなく欠席のまま判決を受け、同判決が確定したなど、判示の事情のもとにおいては、民訴法四二〇条一項五号の再審事由があるものというべきである。
事件番号: 昭和48(オ)1189 / 裁判年月日: 昭和52年5月27日 / 結論: 棄却
民訴法四二〇条一項六号、二項後段に基づく再審の訴の除斥期間は、被疑者の死亡、公訴権の時効消滅、不起訴処分等の事実が判決確定前に生じたときは判決確定の時から、確定後に生じたときは右事実の生じた時から、それぞれ起算すべきである。