民訴法四二〇条一項六号、二項後段に基づく再審の訴の除斥期間は、被疑者の死亡、公訴権の時効消滅、不起訴処分等の事実が判決確定前に生じたときは判決確定の時から、確定後に生じたときは右事実の生じた時から、それぞれ起算すべきである。
民訴法四二〇条一項六号、二項後段に基づく再審の訴の除斥期間の起算日
民訴法420条1項6号,民訴法420条2項,民訴法424条3項,民訴法424条4項
判旨
民訴法338条1項6号に基づく再審の訴えにおいて、有罪判決を得られない「証明不能」の事由が判決確定前に生じていた場合、5年の除斥期間は判決確定時から起算される。有罪判決を得る可能性を立証するための鑑定書作成等は「再審の事由が発生した日」には当たらない。
問題の所在(論点)
民訴法338条1項6号・2項(旧420条1項6号・2項)の再審事由において、被疑者の死亡等により有罪判決が得られない場合の除斥期間(同法342条3項・4項、旧424条3項・4項)の起算点はいつか。特に、有罪の可能性を証明するための新証拠が得られた時を起算点とできるか。
規範
民訴法338条1項6号に基づく再審の訴えが同条2項後段の要件を具備するには、被疑者の死亡等により有罪判決を得られない事由に加え、有罪判決を得る可能性があったことの立証を要する。もっとも、当該可能性は死亡等の時に既に存在すべきものである。したがって、除斥期間(同法342条3項・4項)の起算点は、死亡等の事実が前審判決確定前に生じたときは判決確定時、確定後に生じたときはその事実が生じた時となる。立証のための証拠(鑑定書等)の作成日は起算点とはならない。
重要事実
上告人は、前審判決の証拠となった文書が偽造されたとして再審を申し立てた。当該文書の偽造にかかる被疑者Dは、前審判決の確定前に死亡していた。上告人は、前審判決確定後に作成された印影に関する鑑定書を、有罪判決を得る可能性の立証として提出し、当該鑑定書の作成日が再審事由の発生日(除斥期間の起算点)であると主張して、判決確定から5年経過後の再審請求の適法性を争った。
事件番号: 昭和39(オ)1374 / 裁判年月日: 昭和42年6月20日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第二項後段により再審請求するには、有罪の確定判決を得る可能性があるのに、被疑者が死亡したり、公訴権が時効消滅したり、あるいは起訴猶予処分をうけたりして有罪の確定判決をえられなかつたことを証明することを要する。
あてはめ
本件において、被疑者Dの死亡という「有罪の確定判決を得ることができない理由」は、前審判決の確定前に発生している。有罪の確定判決を得る可能性の有無は、この死亡等の時点で既に客観的に定まっているべき事柄である。上告人が提出した鑑定書は、有罪の可能性を立証するための証拠方法にすぎず、その作成をもって新たな再審事由が発生したとみることはできない。したがって、本件再審の訴えの除斥期間は、前審判決確定時から起算されるべきである。
結論
再審の訴えは、前審判決確定時から5年の除斥期間内に提起されなければならない。本件は確定から5年を経過しており、鑑定書作成時を起算点とする上告人の主張は認められず、訴えは不適法である。
実務上の射程
338条1項6号の再審事由において、除斥期間の起算点を「証拠の入手時」まで遅らせることはできないことを明示した。実務上、文書偽造等を理由とする再審では、刑事手続の帰趨や被疑者の存否を早期に確認し、判決確定時または死亡時等の客観的事由発生時から5年以内に提訴する必要がある。
事件番号: 昭和44(オ)210 / 裁判年月日: 昭和47年5月30日 / 結論: 棄却
一、民訴法四二〇条一項六号または七号を再審事由とする再審の訴が同条一項但書により許されないのは、再審原告が、再審の訴の対象となつた判決に対する上訴により、右再審事由のほか、同条二項の要件を主張したか、または右要件の存在を知りながらこれを主張しなかつた場合に限られる。 二、偽造された文書が判決の証拠となつた場合において、…
事件番号: 昭和46(オ)1105 / 裁判年月日: 昭和47年4月28日 / 結論: 棄却
被上告人を被告とする訴訟において、被上告人の妻がその訴状、期日呼出状を毀棄し、判決正本を隠匿したため、被上告人がその訴訟の係属およびその進行についてなんら知るところなく欠席のまま判決を受け、同判決が確定したなど、判示の事情のもとにおいては、民訴法四二〇条一項五号の再審事由があるものというべきである。
事件番号: 昭和40(オ)423 / 裁判年月日: 昭和41年9月6日 / 結論: 棄却
起訴猶予処分は民訴法第四二〇条第二項後段にいう有罪の確定判決を得られない場合にあたる。
事件番号: 昭和26(オ)908 / 裁判年月日: 昭和29年2月11日 / 結論: 棄却
判決確定前既に生じていた事由に基ずく再審の訴が、その確定後五年を経過して提起された場合にあつては、その事情の如何を問わず、不適法として却下されることを免れない。