一、民訴法四二〇条一項六号または七号を再審事由とする再審の訴が同条一項但書により許されないのは、再審原告が、再審の訴の対象となつた判決に対する上訴により、右再審事由のほか、同条二項の要件を主張したか、または右要件の存在を知りながらこれを主張しなかつた場合に限られる。 二、偽造された文書が判決の証拠となつた場合において、右偽造自体につき有罪の判決がなされていなくとも、それと科刑上一罪の関係にある公正証書原本不実記載・同行使の罪に対し有罪判決が確定したときは、右文書偽造行為につき、民訴法四二〇条二項後段の再審の要件が具備されるに至つたものと解すべきである。 三、牽連犯において、目的行為がその手段行為に対する時効期間の満了前に実行されたときは、両者の公訴時効は、不可分的に、最も重い刑を標準に最終行為の時より起算すべきである。 四、再審の訴が民訴法四二〇条一項六号または七号に基づいて提起された場合において、同条二項の要件が判決確定後に具備されたときは、同法四二四条四項にいう「再審ノ事由カ判決確定後ニ生シタルトキ」にあたると解すべきである。
一、民訴法四二〇条一項六号または七号に基づく再審の訴と同項但書 二、民訴法四二〇条二項後段の再審の要件が具備されたと認められた事例 三、牽連犯の公訴時効 四、民訴法四二〇条一項六号または七号に基づく再審の訴と同法四二四条四項
民訴法420条1項6号,民訴法420条1項7号,民訴法420条1項但書,民訴法420条2項,民訴法424条3項4項,刑法54条1項後段,刑訴法250条,刑訴法253条1項
判旨
刑事有罪判決の確定等の要件(民訴法338条2項)が判決確定後に具備された場合、再審期間の5年制限(同342条2項)は当該要件充足時から起算される。
問題の所在(論点)
1.旧訴訟の上訴審で証拠偽造を主張していた場合、民訴法338条1項但書により再審が制限されるか。2.判決確定から5年経過後の再審提起において、刑事判決確定等の後発的要件充足は、民訴法342条2項の期間制限の特則(確定後発生)に含まれるか。3.手段行為である偽造罪につき確定判決がない場合でも、目的行為の有罪確定により同法338条2項の要件を充足するか。
規範
1.民訴法338条1項但書の「上訴によりその事由を主張したとき」とは、再審事由のみならず、同条2項の要件(刑事有罪判決の確定等)が具備されたこと、又はその存在を知りながら主張しなかった場合に限られる。2.同法342条2項にいう「再審の事由が判決確定後に生じたとき」とは、同法338条1項6号・7号の場合であっても、刑事有罪判決の確定等の要件が判決確定後に具備されたときを含む。3.手段行為(私文書偽造)と目的行為(公正証書原本不実記載)が牽連犯の関係にある場合、目的行為につき有罪判決が確定し、手段行為につき既判力等の影響で公訴提起不能となったときは、同法338条2項後段の「証拠欠缺以外の理由により有罪の確定判決を得ることができないとき」に当たる。
事件番号: 昭和48(オ)1189 / 裁判年月日: 昭和52年5月27日 / 結論: 棄却
民訴法四二〇条一項六号、二項後段に基づく再審の訴の除斥期間は、被疑者の死亡、公訴権の時効消滅、不起訴処分等の事実が判決確定前に生じたときは判決確定の時から、確定後に生じたときは右事実の生じた時から、それぞれ起算すべきである。
重要事実
被上告人らは、旧訴訟において上告人が提出した証拠(甲1号証等)が偽造であると主張していたが、上告棄却により旧訴訟の判決が確定した。その後、上告人に対し、当該偽造証拠を用いた公正証書原本不実記載等の罪で有罪判決が確定した(偽造罪自体は牽連犯として別途起訴されず)。被上告人は、この刑事判決確定を知った日から30日以内、かつ旧訴訟判決確定から5年経過後に再審を提起した。上告人は、旧訴訟で既に偽造を主張していたことや、5年の除斥期間を経過していることを理由に、再審の不適法を主張した。
あてはめ
1.被上告人らが証拠偽造を主張していた当時、まだ刑事有罪判決等の338条2項の要件は具備されていなかったため、1項但書による制限は受けない。2.判決確定から5年経過後に再審事由(刑事判決確定)が具備された場合を同法342条2項から除外すると、再審を事実上否定し当事者に酷である。よって同項を適用し、刑事判決確定時から期間を起算すべきである。3.本件の偽造行為と公正証書原本不実記載等は牽連犯であり、後者の有罪確定により前者の追及が実質上不能となった以上、338条2項後段の要件を満たすと評価できる。
結論
本件再審の訴えは、民訴法338条1項但書に抵触せず、また342条の再審期間内になされた適法なものである。
実務上の射程
刑事判決の確定を待つ必要がある証拠偽造等の再審事由(338条1項6号・7号)について、民事判決確定から5年が経過しても、刑事判決確定から期間をカウントできることを明示した。実務上、刑事手続の遅延により再審の道が閉ざされることを防ぐ極めて重要な救済法理である。
事件番号: 昭和31(ヤ)5 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えの提起期間に関し、判決に影響を及ぼすべき重要事項の判断遺脱は、特段の事情のない限り、判決正本の送達を受けた代理人が閲読し本人に告げるのに必要な時間的余裕を含め、送達当時に知り得たものと解される。 第1 事案の概要:再審原告は、建物収去土地明渡請求事件の上告審判決に判断遺脱があるとして再審…
事件番号: 昭和27(オ)393 / 裁判年月日: 昭和29年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審の訴えを提起できる事由は、民事訴訟法に列挙された事由(旧420条1項各号、現338条1項各号)に限られ、それ以外の事由による再審は認められない。一旦確定した判決の法的安定性を尊重する観点から、再審事由の規定は例示的なものではなく、限定的なものである。 第1 事案の概要:建物収去土地明渡請求訴訟…
事件番号: 昭和39(オ)1374 / 裁判年月日: 昭和42年6月20日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第二項後段により再審請求するには、有罪の確定判決を得る可能性があるのに、被疑者が死亡したり、公訴権が時効消滅したり、あるいは起訴猶予処分をうけたりして有罪の確定判決をえられなかつたことを証明することを要する。
事件番号: 昭和32(ヤ)40 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】当事者本人の供述が虚偽であることを理由に再審の訴えを提起する場合、民事訴訟法338条1項7号の類推適用または適用により、罰すべき行為について有罪の判決等が確定していること等の要件を満たす必要がある。 第1 事案の概要:再審原告は、東京高等裁判所の判決の証拠となった再審被告本人の供述が虚偽であると主…