判旨
再審の訴えの提起期間に関し、判決に影響を及ぼすべき重要事項の判断遺脱は、特段の事情のない限り、判決正本の送達を受けた代理人が閲読し本人に告げるのに必要な時間的余裕を含め、送達当時に知り得たものと解される。
問題の所在(論点)
民事訴訟法上の再審の訴えの出訴期間(再審の事由を知った日から30日の不変期間)の起算点において、代理人への判決正本送達をもって「再審の事由を知った」とみなすことができるか。
規範
再審の事由は、事柄の性質上、判決正本の送達を受け一読すれば容易に覚知し得るものである。したがって、弁護士たる代理人が判決正本の送達を受けた場合、直ちに閲読して遅滞なく本人に告知すべきであるから、特段の事情のない限り、本人は、送達当時(本人への告知に要する時間的余裕を含む)に再審事由を知り得たものと解するのが相当である。
重要事実
再審原告は、建物収去土地明渡請求事件の上告審判決に判断遺脱があるとして再審を提起した。上告審判決の正本は、昭和30年11月2日に上告代理人弁護士に送達され、直ちに再審原告本人の手中に帰した。しかし、本人は法律知識の欠如等を理由に、再審事由を知ったのは昭和31年4月20日であると主張し、同年5月9日に再審の訴えを提起した。
あてはめ
判決正本は昭和30年11月2日に弁護士に送達されており、その後直ちに本人の手元に渡っている。代理人が閲読せず、本人の法律知識が不十分であったとしても、送達から5ヶ月余を経過した昭和31年4月20日まで再審事由を覚知しなかったとの主張は首肯し難い。その他特段の事情の立証もないため、送達当時(又はその直後)に再審事由を知り得たものと判断される。
結論
本件再審の訴えは、再審の事由を覚知した後30日の不変期間を経過した後に提起された不適法なものとして、却下される。
事件番号: 昭和27(ヤ)3 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 却下
上告審判決に対する判断遺脱を事由とする再審の訴の提起期間は、判断遺脱の覚知を妨げる特別の事情のない限り、右判決確定の日から三〇日である。
実務上の射程
民訴法342条1項の「再審の事由を知った日」の解釈を示す。代理人への送達時を基準とする原則論を提示しており、本人の主観的な無知や法律知識の欠如は、原則として起算点を遅らせる「特段の事情」には当たらないことを明確にしている。
事件番号: 昭和35(ヤ)16 / 裁判年月日: 昭和35年7月7日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】法定の期間経過後に提出された上告理由補充書に初めて具体的に記載された事項については、適法な上告理由とはいえず、これに対して判断を示さなくても判断遺脱の再審事由には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、上告判決に判断遺脱があるとして再審を申し立てた。しかし、当該上告審において期間内に提出された…
事件番号: 昭和32(ヤ)21 / 裁判年月日: 昭和32年12月6日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えにおいて、訴状に記載された事由が民事訴訟法所定の再審事由(旧420条1項各号、現338条1項各号)のいずれにも該当しない場合には、当該再審の訴えは不適法として却下される。 第1 事案の概要:再審原告は、最高裁判所の確定判決に対し、「再審の上訴」と題する書面を提出して再審の訴えを提起した。…
事件番号: 昭和44(オ)210 / 裁判年月日: 昭和47年5月30日 / 結論: 棄却
一、民訴法四二〇条一項六号または七号を再審事由とする再審の訴が同条一項但書により許されないのは、再審原告が、再審の訴の対象となつた判決に対する上訴により、右再審事由のほか、同条二項の要件を主張したか、または右要件の存在を知りながらこれを主張しなかつた場合に限られる。 二、偽造された文書が判決の証拠となつた場合において、…
事件番号: 昭和27(オ)393 / 裁判年月日: 昭和29年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審の訴えを提起できる事由は、民事訴訟法に列挙された事由(旧420条1項各号、現338条1項各号)に限られ、それ以外の事由による再審は認められない。一旦確定した判決の法的安定性を尊重する観点から、再審事由の規定は例示的なものではなく、限定的なものである。 第1 事案の概要:建物収去土地明渡請求訴訟…