上告審判決に対する判断遺脱を事由とする再審の訴の提起期間は、判断遺脱の覚知を妨げる特別の事情のない限り、右判決確定の日から三〇日である。
上告審判決に対する判断遺脱を事由とする再審の訴の提起期間
民訴法424条,民訴法420条1項9号
判旨
最終審の判決に対し判決確定前に再審事由を知った場合の再審期間(民訴法342条1項)は、判決確定の日から起算すべきである。
問題の所在(論点)
最終審の判決において、判決確定前に再審事由を覚知し得る状況にあった場合、民事訴訟法342条1項(旧424条1項)の再審期間の起算点はいつか。また、判断遺脱のような事由を「知った日」はどのように認定されるか。
規範
最終審の判決のように上訴の途が存在しない場合、判決確定前に覚知した事由であっても、確定後に再審の訴えをもって主張し得る。この場合、民事訴訟法342条1項(旧424条1項)所定の30日の出訴期間は、再審の事由を知った日からではなく、判決確定の日から起算すべきである。これは再審が確定判決に対する不服申立てであること、および同条3項・4項が確定前後の事由発生に応じた起算点を定めている趣旨に合致する。
重要事実
再審原告は、最高裁判所が昭和26年12月18日に言い渡した判決(上告審判決)に対し、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱があるとして再審を提起した。判決正本は同年12月19日に送達され、再審原告は直ちに読了したが、再審の訴えを提起したのは昭和27年2月5日であった。再審原告は、判決正本の送達当時は事由を知らず、その後の研究の結果、同年1月20日に初めて事由を覚知したと主張した。
事件番号: 昭和31(ヤ)5 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えの提起期間に関し、判決に影響を及ぼすべき重要事項の判断遺脱は、特段の事情のない限り、判決正本の送達を受けた代理人が閲読し本人に告げるのに必要な時間的余裕を含め、送達当時に知り得たものと解される。 第1 事案の概要:再審原告は、建物収去土地明渡請求事件の上告審判決に判断遺脱があるとして再審…
あてはめ
判断遺脱という事由は性質上、判決正本の送達を受け読了すれば容易に覚知し得るものであるから、特段の事情がない限り、正本送達時に事由を知り得たものと解される。本件では昭和26年12月19日の送達時に事由を知った(または知り得た)といえる。最終審判決ゆえに確定前であっても再審主張は可能だが、起算点は判決確定の日(送達から10日経過時)である昭和26年12月29日となる。そこから30日以内である昭和27年1月28日までに提訴すべきであった。
結論
本件再審の訴えは、判決確定の日から起算して30日の期間を経過した後に提起されたものであり、不適法として却下される。
実務上の射程
再審期間の起算点に関する基本判例である。特に「判断遺脱」のように判決文自体から明白な事由については、送達・読了時をもって「知った」と擬制されやすいため、起算点の認定において厳格な実務運用がなされることを示唆している。答案上は再審の適法性を論じる際の期間計算の規範として用いる。
事件番号: 昭和43(オ)283 / 裁判年月日: 昭和45年12月22日 / 結論: 棄却
当事者が判決の確定前に再審事由を知つた場合においては、民訴法四二四条一項所定の再審期間は、判決確定の日から始まるものと解すべきである。
事件番号: 昭和33(ヤ)31 / 裁判年月日: 昭和35年11月9日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審事由としての判断遺脱について、判決正本が当事者の代理人に送達された場合には、特段の事情がない限り、その時点で判決内容および判断遺脱の事実を覚知したものと推定される。 第1 事案の概要:再審原告は、昭和28年12月23日に言い渡された最高裁判決に判断の遺脱があるとして、昭和33年12月24日に再…
事件番号: 昭和35(ヤ)26 / 裁判年月日: 昭和36年6月8日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】判断の遺脱を理由とする再審の訴えにおいて、再審事由を「知った」時とは、特段の事情のない限り、判決正本の送達を受けた時を指す。 第1 事案の概要:再審原告は、原判決に判断の遺脱があるとして再審の訴えを提起した。再審原告が原判決正本の送達を受けたのは昭和35年9月1日であったが、上告状と題する本件再審…