判旨
判断の遺脱を理由とする再審の訴えにおいて、再審事由を「知った」時とは、特段の事情のない限り、判決正本の送達を受けた時を指す。
問題の所在(論点)
判断の遺脱を再審事由とする場合、民事訴訟法342条1項の「再審の理由を知った日」はいつと解すべきか。
規範
民事訴訟法342条1項(旧424条1項)に規定される再審の期間の起算点である「再審の理由を知った日」について、判断の遺脱を理由とする場合は、事柄の性質上、判決正本の送達を受け、これを通読すれば容易に覚知し得るものである。したがって、特段の事情のない限り、判決正本送達時をもって、その再審事由を知ったものと認めるのが相当である。
重要事実
再審原告は、原判決に判断の遺脱があるとして再審の訴えを提起した。再審原告が原判決正本の送達を受けたのは昭和35年9月1日であったが、上告状と題する本件再審訴状を提出したのは同年10月3日であった。なお、本件において判決正本受領時に再審事由を知ることができなかったとする特段の事情の有無については判決文からは不明である。
あてはめ
本件における再審事由は判断の遺脱であるところ、これは判決正本を一読すれば容易に認識可能な事由である。再審原告が判決正本を受領したのは9月1日であり、この時点で再審事由を知ったものと認められる。そうすると、30日の不変期間である再審期間は同日から起算されるべきであるが、訴状の提出は10月3日になされており、既に30日を経過している。したがって、本件再審の訴えは出訴期間を徒過したものと評価される。
結論
本件再審の訴えは、再審期間経過後に提起された不適法な訴えであり、却下されるべきである。
実務上の射程
事件番号: 昭和36(ヤ)3 / 裁判年月日: 昭和36年9月15日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審事由としての刑事上の罰すべき行為(旧民訴420条1項4号・6号)について、有罪判決の確定等の要件を満たさない場合や、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の遺脱(同9号)に基づく再審の訴えが出訴期間を経過した後に提起された場合は、いずれも不適法として却下される。 第1 事案の概要:再審原告は、旧民訴…
本判例は、判断の遺脱という客観的に認識容易な再審事由に関する起算点を明確にしたものである。答案上は、再審の訴えの適法性を検討する際、特に「知った日」の解釈において、事由の性質(外形的・客観的な判決内容の不備か、後発的な証拠の発見か等)に応じて起算点を認定する際の基準として用いることができる。
事件番号: 昭和27(ヤ)3 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 却下
上告審判決に対する判断遺脱を事由とする再審の訴の提起期間は、判断遺脱の覚知を妨げる特別の事情のない限り、右判決確定の日から三〇日である。
事件番号: 昭和32(ヤ)17 / 裁判年月日: 昭和32年10月30日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えにおいて、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱を理由とする場合であっても、原判決が当該点について必要な判断を示しているときは、適法な再審事由に当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、最高裁判所が下した確定判決に対し、上告理由として主張した諸点について判断を遺脱した違法があるとし…
事件番号: 昭和31(ヤ)5 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えの提起期間に関し、判決に影響を及ぼすべき重要事項の判断遺脱は、特段の事情のない限り、判決正本の送達を受けた代理人が閲読し本人に告げるのに必要な時間的余裕を含め、送達当時に知り得たものと解される。 第1 事案の概要:再審原告は、建物収去土地明渡請求事件の上告審判決に判断遺脱があるとして再審…
事件番号: 昭和33(ヤ)31 / 裁判年月日: 昭和35年11月9日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審事由としての判断遺脱について、判決正本が当事者の代理人に送達された場合には、特段の事情がない限り、その時点で判決内容および判断遺脱の事実を覚知したものと推定される。 第1 事案の概要:再審原告は、昭和28年12月23日に言い渡された最高裁判決に判断の遺脱があるとして、昭和33年12月24日に再…