判旨
再審事由としての判断遺脱について、判決正本が当事者の代理人に送達された場合には、特段の事情がない限り、その時点で判決内容および判断遺脱の事実を覚知したものと推定される。
問題の所在(論点)
判決正本が代理人に送達された事実をもって、民事訴訟法342条1項(旧424条1項)にいう「当事者が再審の理由を知った」ものと推定できるか。特に、客観的に判決内容を確認し得る状態が、主観的な覚知の推定に結びつくかが問題となる。
規範
再審の訴えの提起期間(民訴法342条1項)に関し、判決正本が当事者又はその代理人に送達された事実は、特段の事情がない限り、当事者が判決の内容を知り、かつそこに判断遺脱等の再審事由が存在することを覚知したことを推認させる有力な資料となる。したがって、送達時をもって「再審の理由を知った日」と推定するのが相当である。
重要事実
再審原告は、昭和28年12月23日に言い渡された最高裁判決に判断の遺脱があるとして、昭和33年12月24日に再審を申し立てた。記録によれば、当該判決の正本は、昭和28年12月24日に再審原告の被承継人の上告代理人に対して送達されていた。再審原告は、この送達から再審提起までの間に覚知を妨げるような特段の事情については何ら主張していなかった。
あてはめ
本件において、判決正本は昭和28年12月24日に適法に代理人へ送達されている。代理人に正本が送達されれば、通常、当事者はその判決内容を確認し、主張した事項について判断がなされているか否かを知り得る状態に置かれる。本件では、判決正本の送達により、上告人は判決内容を知り、判断遺脱があればこれを覚知したものと推定すべきである。これに対し、再審原告からはこの覚知を妨げるような具体的な事情(例えば代理人との連絡不通や心神喪失等)の主張がなされていない。
結論
本件再審の訴えは、判決正本の送達による覚知推定時から起算して法定の30日の期間を経過した後に提起されたものであり、不適法として却下される。
事件番号: 昭和33(ヤ)22 / 裁判年月日: 昭和34年6月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審事由としての「判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したこと」(民訴法338条1項10号)の成否について、上告審判決が上告理由に対し、独自の理由に基づき上告を採用し得ない理由を説示している場合には、判断遺脱の違法は認められない。 第1 事案の概要:再審原告は、上告審判決が、控訴審判決…
実務上の射程
再審期間の起算点である「再審の理由を知った日」の立証責任の所在、ないし事実上の推定について論じる際に用いる。実務上、判決正本の送達は再審事由の覚知を強く推認させるため、当事者がこれに抗うには、送達時において知ることが不可能であったという特段の事情を具体的に主張・立証する必要がある。
事件番号: 昭和26(ヤ)6 / 裁判年月日: 昭和28年6月9日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼすべき重要事項について判断の遺脱がない場合には、民事訴訟法上の再審事由(現行法338条1項9号)は認められない。 第1 事案の概要:再審原告らは、自作農創設特別措置法14条の適用および同条の違憲性を争点としていた。原上告審判決(本案判決)は、同条が適用されるべきこと、および同条が違…
事件番号: 昭和33(オ)653 / 裁判年月日: 昭和34年4月9日 / 結論: 棄却
一 一審において取り寄せ法廷に顕出された証拠書類は、すでに還付ずみのものであつても、控訴審において当事者が一審の口頭弁論の結果を陳述することにより控訴審に顕出されたこととなるから、控訴審において改めて取り寄せ法廷に顕出することなくこれを証拠として採用することができる。 二 行政事件訴訟特例法第九条による職権証拠調の結果…
事件番号: 昭和25(オ)208 / 裁判年月日: 昭和26年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の効力発生時期につき、処分を記載した書面の到達が必要であるとし、証拠に基づく到達事実の認定に違法はないとした。 第1 事案の概要:本件農地に対する買収処分がなされた際、買収令書が上告人に対して送達された。原審は、証拠に基づき、当該買収令書が3月5日に上告人に到達したと認定した。これに対し上…
事件番号: 昭和30(オ)670 / 裁判年月日: 昭和32年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定における証拠の取捨選択は裁判所の自由裁量に委ねられており、引用された証拠から認定事実が導き出せる限り、採証法則違反の違法は認められない。 第1 事案の概要:農地遡及買収の基準日(昭和20年11月23日)時点における本件農地の所有者が誰であったかが争点となった事案である。原審は、証拠に基づき…