判旨
判決に影響を及ぼすべき重要事項について判断の遺脱がない場合には、民事訴訟法上の再審事由(現行法338条1項9号)は認められない。
問題の所在(論点)
上告審において下級審の判断を肯定し上告を棄却した場合に、判決に影響を及ぼすべき重要な事項について「判断の遺脱」(現行民事訴訟法338条1項9号)があったといえるか。
規範
判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したことが認められない限り、再審の訴えは理由がない。上告審が下級審の判断を妥当と認め、上告棄却の理由として十分な説示を行っている場合には、判断遺脱の再審事由は構成しない。
重要事実
再審原告らは、自作農創設特別措置法14条の適用および同条の違憲性を争点としていた。原上告審判決(本案判決)は、同条が適用されるべきこと、および同条が違憲ではないことを明示的に判断した。その上で、本訴は同条所定の期間経過後に提起された不適法なものであるとした第2審判決を相当として、上告を棄却した。これに対し、再審原告らが判断遺脱(旧民事訴訟法420条1項9号)等を理由に再審の訴えを提起した事案である。
あてはめ
原上告審判決は、本件において自作農創設特別措置法14条が適用されるべきこと、および同条が合憲であることを判断している。また、当該規定に基づく期間経過により訴えを不適法とした原審の判断を相当と認めている。これらの判断は、本件上告を棄却する理由として十分な説示を含んでおり、再審原告らが主張するような判断の遺脱は認められない。
結論
本件再審の訴えには再審事由が認められず、理由がないため、却下される。
実務上の射程
再審事由としての「判断遺脱」の存否を論じる際の基準を示す。上告審が原審の結論を維持するに足りる理由を端的に述べている場合には、当事者が主張した細部の論点すべてに個別具体的に応答していなくとも、直ちに判断遺脱にはならないことを示唆する。
事件番号: 昭和33(ヤ)22 / 裁判年月日: 昭和34年6月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審事由としての「判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したこと」(民訴法338条1項10号)の成否について、上告審判決が上告理由に対し、独自の理由に基づき上告を採用し得ない理由を説示している場合には、判断遺脱の違法は認められない。 第1 事案の概要:再審原告は、上告審判決が、控訴審判決…
事件番号: 昭和28(ヤ)3 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が上告理由について調査の必要がないと判断して棄却した場合には、民事訴訟法における判断の遺脱(再審事由)は認められない。 第1 事案の概要:再審原告は、最高裁判所が下した原判決(上告棄却判決)に対し、再審事由(判断の遺脱)があるとして再審の訴えを提起した。原判決は、当時の「最高裁判所におけ…
事件番号: 昭和27(ヤ)5 / 裁判年月日: 昭和28年6月23日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が違憲判断を行う場合には大法廷での裁判を要するが、当事者の主張がそのような判断を要するものに該当するか否かは、小法廷において判断することができる。 第1 事案の概要:再審原告は、原上告審判決(最高裁第二小法廷)が裁判所法10条に違反した構成で行われたとして、民事訴訟法(旧法)420条1項…
事件番号: 昭和33(ヤ)31 / 裁判年月日: 昭和35年11月9日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審事由としての判断遺脱について、判決正本が当事者の代理人に送達された場合には、特段の事情がない限り、その時点で判決内容および判断遺脱の事実を覚知したものと推定される。 第1 事案の概要:再審原告は、昭和28年12月23日に言い渡された最高裁判決に判断の遺脱があるとして、昭和33年12月24日に再…