判旨
最高裁判所が違憲判断を行う場合には大法廷での裁判を要するが、当事者の主張がそのような判断を要するものに該当するか否かは、小法廷において判断することができる。
問題の所在(論点)
当事者が憲法違反の主張を行っている場合において、その主張が裁判所法10条但書1号所定の「憲法に適合するかしないかを判断する」場合に該当するか否かを、小法廷が判断できるか。それとも直ちに大法廷へ回付しなければならないか。
規範
裁判所法10条但書1号は、当事者の主張に基づき法律等の合憲性を判断する場合に大法廷での裁判を義務付けている。しかし、当事者の主張が実際にそのような大法廷による憲法判断を必要とする事態(合憲性の実質的判断を要する場面)に該当するかどうかを判定する権限は、小法廷に留保されている。
重要事実
再審原告は、原上告審判決(最高裁第二小法廷)が裁判所法10条に違反した構成で行われたとして、民事訴訟法(旧法)420条1項1号(法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと)に準ずる再審事由を主張し、再審の訴えを提起した。
あてはめ
最高裁判所第二小法廷が行った判断は、当事者の憲法違反の主張が「大法廷での憲法判断を要する事案」にあたるか否かを判定したに過ぎない。これは法律等の合憲性そのものを実質的に判断する前段階の手続的評価であり、裁判所法10条に違反する構成とはいえない。
結論
本件再審の訴えには裁判所法10条違反の再審事由が認められないため、再審の訴えを却下する。
実務上の射程
憲法訴訟において、小法廷が「憲法判断を回避」して上告を棄却・却下する際、その判断自体が裁判所法10条違反(大法廷回付義務違反)にならないことを正当化する根拠として用いられる。
事件番号: 昭和26(ヤ)6 / 裁判年月日: 昭和28年6月9日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼすべき重要事項について判断の遺脱がない場合には、民事訴訟法上の再審事由(現行法338条1項9号)は認められない。 第1 事案の概要:再審原告らは、自作農創設特別措置法14条の適用および同条の違憲性を争点としていた。原上告審判決(本案判決)は、同条が適用されるべきこと、および同条が違…
事件番号: 昭和28(ヤ)3 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が上告理由について調査の必要がないと判断して棄却した場合には、民事訴訟法における判断の遺脱(再審事由)は認められない。 第1 事案の概要:再審原告は、最高裁判所が下した原判決(上告棄却判決)に対し、再審事由(判断の遺脱)があるとして再審の訴えを提起した。原判決は、当時の「最高裁判所におけ…
事件番号: 昭和33(ヤ)22 / 裁判年月日: 昭和34年6月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審事由としての「判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したこと」(民訴法338条1項10号)の成否について、上告審判決が上告理由に対し、独自の理由に基づき上告を採用し得ない理由を説示している場合には、判断遺脱の違法は認められない。 第1 事案の概要:再審原告は、上告審判決が、控訴審判決…
事件番号: 昭和33(ヤ)8 / 裁判年月日: 昭和35年4月26日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】農地買収計画の承認は行政処分に該当せず、その後に当該計画や売渡処分の修正がなされたとしても、民事訴訟法上の再審事由(判決の基礎となった行政処分の変更)には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告Aは、土地の所有権や買収計画の適否を争っていた。第二審判決は、計画樹立時に県道用地として買収済であればA…
事件番号: 昭和25(オ)73 / 裁判年月日: 昭和25年10月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴願期間の経過に関し、旧訴願法8条3項にいう「宥恕スベキ事由」の有無の判断は、行政庁の自由裁量に属するものではなく、裁判所が審理判断し得る事項である。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収計画に対して異議および訴願を経た後に出訴したが、原審はその訴願が期間経過後になされた不適法なものであると判断し…