判旨
最高裁判所が上告理由について調査の必要がないと判断して棄却した場合には、民事訴訟法における判断の遺脱(再審事由)は認められない。
問題の所在(論点)
最高裁判所が、上告理由が法定の事由に該当しないと判断して上告を棄却した場合において、これを「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱したこと」(現行民事訴訟法338条1項9号参照)に該当するといえるか。
規範
民事訴訟法上の再審事由である「判断の遺脱」とは、裁判所が当事者の申し立てた独立の攻撃防御方法に対して、判決の主文または理由において何ら応答していないことを指す。しかし、上告審が上告理由について法令違反等の要件に該当しないと判断し、調査の必要がないとして上告を棄却した場合には、実質的な判断が示されているため、判断の遺脱には当たらない。
重要事実
再審原告は、最高裁判所が下した原判決(上告棄却判決)に対し、再審事由(判断の遺脱)があるとして再審の訴えを提起した。原判決は、当時の「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」所定の上告理由に該当せず、また法令解釈に関する重要な主張も含まないとして、調査の必要がないことを理由に上告を棄却したものであった。
あてはめ
最高裁判所は、再審原告が主張する上告理由が、当時の特例法1号から3号のいずれにも該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含むものでもないと判断している。これは、裁判所が上告理由の内容を十分に検討した結果として、調査の必要性がないと判断を下したものであり、当事者の主張を看過したものではない。したがって、判決において判断を示さなかった「遺脱」があるとはいえない。
結論
本件再審の訴えには再審事由が認められず、理由がないため却下される。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(ヤ)22 / 裁判年月日: 昭和34年6月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審事由としての「判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したこと」(民訴法338条1項10号)の成否について、上告審判決が上告理由に対し、独自の理由に基づき上告を採用し得ない理由を説示している場合には、判断遺脱の違法は認められない。 第1 事案の概要:再審原告は、上告審判決が、控訴審判決…
上告審において「上告理由に当たらない」として棄却・却下された場合に、これを不服として再審を申し立てても、判断の遺脱(現民訴法338条1項9号)を理由とする再審は認められないことを示す。上告審の裁量的な判断枠組みを尊重する趣旨といえる。
事件番号: 昭和26(ヤ)6 / 裁判年月日: 昭和28年6月9日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼすべき重要事項について判断の遺脱がない場合には、民事訴訟法上の再審事由(現行法338条1項9号)は認められない。 第1 事案の概要:再審原告らは、自作農創設特別措置法14条の適用および同条の違憲性を争点としていた。原上告審判決(本案判決)は、同条が適用されるべきこと、および同条が違…
事件番号: 昭和27(ヤ)5 / 裁判年月日: 昭和28年6月23日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が違憲判断を行う場合には大法廷での裁判を要するが、当事者の主張がそのような判断を要するものに該当するか否かは、小法廷において判断することができる。 第1 事案の概要:再審原告は、原上告審判決(最高裁第二小法廷)が裁判所法10条に違反した構成で行われたとして、民事訴訟法(旧法)420条1項…
事件番号: 昭和33(ヤ)8 / 裁判年月日: 昭和35年4月26日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】農地買収計画の承認は行政処分に該当せず、その後に当該計画や売渡処分の修正がなされたとしても、民事訴訟法上の再審事由(判決の基礎となった行政処分の変更)には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告Aは、土地の所有権や買収計画の適否を争っていた。第二審判決は、計画樹立時に県道用地として買収済であればA…
事件番号: 昭和32(ヤ)25 / 裁判年月日: 昭和34年4月23日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】上告裁判所は不服申立ての限度でのみ調査義務を負うため、上告理由として主張されていない事項や、適法な期間経過後に提出された補充書記載の事項について判断を示さなくとも、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱(民事訴訟法第338条1項9号)には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、前審の上告判…