判旨
事実認定における証拠の取捨選択は裁判所の自由裁量に委ねられており、引用された証拠から認定事実が導き出せる限り、採証法則違反の違法は認められない。
問題の所在(論点)
事実認定の基礎となる証拠の取捨選択および証拠の摘示が不十分であるとして、採証法則違反(自由心証主義の限界逸脱)の違法が認められるか。
規範
事実の認定およびその基礎となる証拠の取捨選択は、特段の事情がない限り、原審の自由な心証(自由裁量)に委ねられる。原判決が引用する証拠に基づき、合理的な推論を経て事実を認定できるのであれば、採証法則違反等の違法は存在しない。
重要事実
農地遡及買収の基準日(昭和20年11月23日)時点における本件農地の所有者が誰であったかが争点となった事案である。原審は、証拠に基づき当該時点の所有者を被上告人Bであると認定したが、上告人は、十分な証拠の摘示がなく、証拠の採用を誤った違法(採証法則違反)があると主張して上告した。
あてはめ
原判決が引用している証拠内容を精査すると、そこから原審が判示した事実を認定することは論理的に可能である。上告人が主張する証拠の採用に関する不満は、実質的に原審の自由裁量に属する証拠の評価を非難するものに過ぎない。したがって、経験則や論理則に反するような採証法則の違反は認められない。
結論
本件上告を棄却する。原判決の事実認定に違法はなく、正当である。
実務上の射程
民事訴訟における事実認定のプロセス(自由心証主義)に関する基本判例である。答案上は、事実認定の違法を主張する際に、単なる評価の不当ではなく、論理則・経験則違反(採証法則違反)のレベルに達している必要があることを示す文脈で使用する。ただし、本判決自体は極めて簡潔なため、具体的な認定手法については他の詳細な判例を参照すべきである。
事件番号: 昭和26(オ)171 / 裁判年月日: 昭和32年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の遡及買収において、基準日時点で所有権が移転していたか否かは、証拠資料に基づき実質的に判断される。土地売渡証等の書面が存在しても、それが後日に作成されたと推認される場合には、基準日における所有権移転を否定し得る。 第1 事案の概要:上告人は本件農地を取得したと主張したが、原審は証拠を総合して、…
事件番号: 昭和28(オ)657 / 裁判年月日: 昭和30年4月26日 / 結論: 破棄差戻
登記簿上の所有者を所有者としてした農地買収処分は、真の所有者がこれを知りまたは知り得べき状態にあつたにかからず、不服申立の方法を採らなかつた場合は、当然には無効ではない。
事件番号: 昭和27(オ)1100 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁量権の有無及び範囲は、根拠規定が客観的な判断基準を示しているか否かにより区別され、基準がない場合は政策的考慮に委ねられた自由裁量となる一方、基準がある場合はその基準への該当性に関し裁判所の審査が及ぶ。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法(以下「法」という)に基づき、本件土地…
事件番号: 昭和30(オ)400 / 裁判年月日: 昭和31年12月28日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法(昭和二一年法律第四三号)附則第二項に「昭和二〇年一一月二三日現在における事実に基いて……農地買収計画を定める」とあるのは、昭和二〇年一一月二三日以後地区農地委員会の設置により農地委員会の管轄区域が変更された場合において、不在地主かどうかを同日現在の管轄区域を基準として決定すべき趣旨を含むものではな…