民訴法四二〇条一項七号に基づく再審の訴を却下された再審原告が、上告を提起し、上告理由書提出期間経過後に生じた同条二項所定の有罪判決確定の事実を上告理由補充書等をもつて主張していたところ、右事実が取り上げられないまま上告が棄却された場合には、上告人が上告理由補充書等で主張する方法によつては裁判所の判断を受けられないことを知つたことが、再審の訴の対象となつた判決につき民訴法四二四条一項にいう「再審ノ事由ヲ知リタル」ことにあたる。
民訴法四二四条一項にいう「再審ノ事由ヲ知りタル」ことにあたるとされた事例
民訴法420条1項7号,民訴法420条2項,民訴法424条1項
判旨
上告理由書提出期間経過後に再審事由である有罪判決の確定を知り、補充書で主張したものの、上告判決で取り上げられなかった場合、上告棄却判決の言渡しの日が「再審の事由を知った日」にあたる。
問題の所在(論点)
上告理由書提出期間後に発生・判明した再審事由を上告理由補充書で主張したものの、上告審で考慮されずに棄却された場合、再審の訴えの出訴期間(民事訴訟法342条1項)の起算点となる「再審の事由を知った時」をいつと解すべきか。
規範
民事訴訟法第342条第1項(旧424条1項)にいう「再審の事由を知りたるとき」とは、上告理由書提出期間経過後に有罪判決確定の事実を知り、その旨を上告理由補充書等で主張したが、当該事実を知った日から30日以上経過した後にされた上告判決において当該主張が取り上げられなかった場合には、当該上告判決の言渡しにより、補充書による主張の方法では裁判所の判断を受けられないことを知った時を指すと解するのが相当である。
重要事実
上告人は、控訴審判決に対する再審の訴え(第1次再審)を提起したが、証言が偽証であるとの有罪判決が未確定であったため却下された。第1次再審の却下判決に対する上告中、理由書提出期間経過後に偽証罪の有罪判決が確定した。上告人は上告理由補充書でこの事実を主張したが、最高裁はこれを上告理由として採用せず上告を棄却した。上告人は、当該上告棄却判決の言渡しから30日以内に、再び控訴審判決に対し本件再審の訴えを提起した。
事件番号: 昭和31(ヤ)5 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えの提起期間に関し、判決に影響を及ぼすべき重要事項の判断遺脱は、特段の事情のない限り、判決正本の送達を受けた代理人が閲読し本人に告げるのに必要な時間的余裕を含め、送達当時に知り得たものと解される。 第1 事案の概要:再審原告は、建物収去土地明渡請求事件の上告審判決に判断遺脱があるとして再審…
あてはめ
上告人は、上告理由補充書を提出した段階では、当該手続内で偽証の確定判決に基づく救済が受けられると期待していたといえる。しかし、上告判決において補充書による主張が取り上げられなかったことで、初めてその主張方法では裁判所の判断が得られないことが確定的に判明した。したがって、有罪判決の確定を現実に知った日(補充書提出前)ではなく、その主張が容れられなかった上告判決の言渡し日を起算点とすべきである。本件では、上告判決の言渡しから30日以内に本件再審の訴えが提起されており、出訴期間を遵守していると評価される。
結論
本件再審の訴えは適法な期間内に提起されたものといえるため、出訴期間を徒過したとした原判決には法令の解釈適用の誤りがある。
実務上の射程
上告審の構造上、期間経過後の新主張が制限されることを背景とした救済法理である。再審事由を知ってから形式的に30日を数えるのではなく、当事者が実効的な主張機会を失った時点を重視する。司法試験では、再審の訴えの適法性(不変期間の遵守)が問われる場面で、手続が継続していた場合の特例的な解釈として引用すべき判例である。
事件番号: 昭和27(ヤ)3 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 却下
上告審判決に対する判断遺脱を事由とする再審の訴の提起期間は、判断遺脱の覚知を妨げる特別の事情のない限り、右判決確定の日から三〇日である。
事件番号: 昭和43(オ)283 / 裁判年月日: 昭和45年12月22日 / 結論: 棄却
当事者が判決の確定前に再審事由を知つた場合においては、民訴法四二四条一項所定の再審期間は、判決確定の日から始まるものと解すべきである。
事件番号: 昭和35(ヤ)26 / 裁判年月日: 昭和36年6月8日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】判断の遺脱を理由とする再審の訴えにおいて、再審事由を「知った」時とは、特段の事情のない限り、判決正本の送達を受けた時を指す。 第1 事案の概要:再審原告は、原判決に判断の遺脱があるとして再審の訴えを提起した。再審原告が原判決正本の送達を受けたのは昭和35年9月1日であったが、上告状と題する本件再審…
事件番号: 昭和48(オ)1189 / 裁判年月日: 昭和52年5月27日 / 結論: 棄却
民訴法四二〇条一項六号、二項後段に基づく再審の訴の除斥期間は、被疑者の死亡、公訴権の時効消滅、不起訴処分等の事実が判決確定前に生じたときは判決確定の時から、確定後に生じたときは右事実の生じた時から、それぞれ起算すべきである。