判旨
法定の期間経過後に提出された上告理由補充書に初めて具体的に記載された事項については、適法な上告理由とはいえず、これに対して判断を示さなくても判断遺脱の再審事由には当たらない。
問題の所在(論点)
法定の期間経過後に初めて具体的に示された上告理由に対し、上告裁判所が判断を示さなかったことが、民事訴訟法上の「判断を遺脱した」(再審事由)に該当するか。
規範
上告理由の提出については法定の期間(民訴法314条2項、規則194条)が定められており、期間内に具体的事由を明示する必要がある。期間内に具体的な指摘がなく、期間経過後の補充書で初めて具体的な主張がなされた場合、それは適法な上告理由の提出(または適法な理由の釈明補充)とは認められず、これに判断を示さないことは判断遺脱(民訴法338条1項9号)を構成しない。
重要事実
再審原告は、上告判決に判断遺脱があるとして再審を申し立てた。しかし、当該上告審において期間内に提出された上告理由書には「原判決に判断の遺脱がある」と抽象的に記載されているのみであった。具体的な判断遺脱の箇所については、法定の期間を経過した後に提出された「上告理由補充書」において初めて具体的に記載されていた。
あてはめ
本件において、期間内に提出された理由は極めて抽象的であり、いかなる点について判断遺脱があるのか具体的に明示されていない。期間経過後の補充書の内容は、先に適法に提出された理由書の単なる釈明補充の範囲を超え、実質的に新たな具体的理由の提示にあたる。したがって、当該論旨は適法な期間内に提出されたものとはいえないため、上告判決がこれに判断を示さなかったのは正当である。
結論
上告判決に判断の遺脱があるとはいえず、本件再審の訴えは棄却(却下)される。
実務上の射程
事件番号: 昭和32(ヤ)21 / 裁判年月日: 昭和32年12月6日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えにおいて、訴状に記載された事由が民事訴訟法所定の再審事由(旧420条1項各号、現338条1項各号)のいずれにも該当しない場合には、当該再審の訴えは不適法として却下される。 第1 事案の概要:再審原告は、最高裁判所の確定判決に対し、「再審の上訴」と題する書面を提出して再審の訴えを提起した。…
上告審における理由書の提出期限と具体性の要求に関する実務上の厳格な運用を確認するものである。答案上は、再審事由や上告理由の適法性を論じる際、期間徒過後の主張が「釈明補充」の範疇に留まるか、それとも実質的な新主張として排除されるかの境界線を示す判例として活用できる。
事件番号: 昭和30(ヤ)15 / 裁判年月日: 昭和32年5月31日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】特別上告において、提出された論旨が実質的に憲法違反ではなく単なる法令違反の主張に過ぎないと判断して棄却した判決には、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱(旧民訴法420条1項9号)は認められない。 第1 事案の概要:再審原告は、従前の判決(特別上告棄却判決)に対し、法律上判断を要すべき事項に…
事件番号: 昭和31(ヤ)5 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えの提起期間に関し、判決に影響を及ぼすべき重要事項の判断遺脱は、特段の事情のない限り、判決正本の送達を受けた代理人が閲読し本人に告げるのに必要な時間的余裕を含め、送達当時に知り得たものと解される。 第1 事案の概要:再審原告は、建物収去土地明渡請求事件の上告審判決に判断遺脱があるとして再審…
事件番号: 昭和31(オ)755 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利濫用の抗弁は、その前提となる権利(賃借権等)の取得が認められない場合には、判断の対象とならない。また、控訴審で主張していない事実を前提とした判断遺脱の主張は、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地について賃借権を取得したと主張し、その上で権利濫用の抗弁を提出した。し…
事件番号: 昭和33(オ)345 / 裁判年月日: 昭和34年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原審で主張していなかった新たな事実上の主張を基礎として原判決の違法をいうことは、民事訴訟の手続上許されない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)からなされた月額5,000円の延滞賃料の催告に基づく契約解除を争っていた。上告人は、上告審において、当該催告より以前…