判旨
特別上告において、提出された論旨が実質的に憲法違反ではなく単なる法令違反の主張に過ぎないと判断して棄却した判決には、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱(旧民訴法420条1項9号)は認められない。
問題の所在(論点)
特別上告棄却判決において、当事者が主張した憲法違反の論旨を単なる法令違反と認定して退けたことが、旧民訴法420条1項9号(現行338条1項9号)の「判断遺脱」に該当するか。
規範
再審事由としての「判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したとき」に該当するか否かは、裁判所が当事者の主張に対して法律上の判断を尽くしたか否かによって決せられる。特別上告の事由を欠くと判断して棄却した確定判決において、その判断過程で当事者の主張を吟味した結果、適法な上告理由に当たらないと解した場合は、判断を遺脱したものとはいえない。
重要事実
再審原告は、従前の判決(特別上告棄却判決)に対し、法律上判断を要すべき事項につき判断を遺脱した再審事由があるとして、再審の訴えを提起した。当該従前の判決は、再審原告が提出した特別上告論旨を、すべて実質的には憲法以外の法令違反の主張に留まるものと認め、民事訴訟法(旧法)409条の2所定の特別上告適法の理由にあたらないと判断して棄却したものであった。
あてはめ
従前の判決は、再審原告が主張した特別上告論旨の内容を検討した上で、それが実質的に憲法違反をいうものではないと判断している。これは、当事者の主張を無視したのではなく、その主張が適法な上告理由に該当するかという点について法律上の評価を下したものである。したがって、適法な理由に当たらないとして特別上告を棄却した判断は、法律上判断を要すべき事項についての判断を遺脱したものとは認められない。
結論
本件再審の訴えには理由がないため、却下を免れない。
事件番号: 昭和35(ヤ)16 / 裁判年月日: 昭和35年7月7日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】法定の期間経過後に提出された上告理由補充書に初めて具体的に記載された事項については、適法な上告理由とはいえず、これに対して判断を示さなくても判断遺脱の再審事由には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、上告判決に判断遺脱があるとして再審を申し立てた。しかし、当該上告審において期間内に提出された…
実務上の射程
特別上告における判断遺脱の有無を争う事案。裁判所が主張を吟味した結果、形式的に「憲法違反」と称していても実質的には法令違反にすぎないと判断した場合は、判断遺脱には当たらないことを示した。再審事由を極めて厳格に解する実務上の運用を追認するものである。
事件番号: 昭和32(ヤ)40 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】当事者本人の供述が虚偽であることを理由に再審の訴えを提起する場合、民事訴訟法338条1項7号の類推適用または適用により、罰すべき行為について有罪の判決等が確定していること等の要件を満たす必要がある。 第1 事案の概要:再審原告は、東京高等裁判所の判決の証拠となった再審被告本人の供述が虚偽であると主…
事件番号: 昭和29(ヤ)11 / 裁判年月日: 昭和31年8月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が上告理由を「調査の必要がない」と判断して棄却した場合、それは上告論旨が適法な上告理由に当たらないと判断したものであり、判決に影響を及ぼすべき重要事項の判断遺脱(民事訴訟法第338条1項9号等)には該当しない。 第1 事案の概要:再審原告は、前訴の上告審判決において、上告論旨(第五、六点…
事件番号: 昭和32(ヤ)25 / 裁判年月日: 昭和34年4月23日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】上告裁判所は不服申立ての限度でのみ調査義務を負うため、上告理由として主張されていない事項や、適法な期間経過後に提出された補充書記載の事項について判断を示さなくとも、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱(民事訴訟法第338条1項9号)には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、前審の上告判…
事件番号: 昭和32(ヤ)21 / 裁判年月日: 昭和32年12月6日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えにおいて、訴状に記載された事由が民事訴訟法所定の再審事由(旧420条1項各号、現338条1項各号)のいずれにも該当しない場合には、当該再審の訴えは不適法として却下される。 第1 事案の概要:再審原告は、最高裁判所の確定判決に対し、「再審の上訴」と題する書面を提出して再審の訴えを提起した。…