被上告人を被告とする訴訟において、被上告人の妻がその訴状、期日呼出状を毀棄し、判決正本を隠匿したため、被上告人がその訴訟の係属およびその進行についてなんら知るところなく欠席のまま判決を受け、同判決が確定したなど、判示の事情のもとにおいては、民訴法四二〇条一項五号の再審事由があるものというべきである。
民訴法四二〇条一項五号の再審事由があるとされた事例
民訴法420条1項5号
判旨
民事訴訟法338条1項5号の再審事由に関し、同居の妻であっても同号にいう「他人」に該当し、また「有罪の確定判決を得ることができないとき」(同条2項)には起訴猶予処分を受けた場合も含まれる。
問題の所在(論点)
1. 同居の親族(妻等)が、民訴法338条1項5号の「他人」に含まれるか。 2. 検察官による起訴猶予処分が、同条2項の「有罪の確定判決を得ることができないとき」に該当するか。
規範
1. 民事訴訟法338条1項5号にいう「他人」とは、当事者以外の者を指し、たとえ当事者の同居の親族(妻等)であってもこれに該当する。 2. 同条2項にいう「有罪の確定判決を得ることができないとき」とは、公訴時効の完成や犯人の死亡等に限らず、検察官による「起訴猶予処分」が付された場合も含まれる(犯罪の嫌疑はあるが情状により起訴を猶予する場合)。
重要事実
上告人(夫)が被上告人(妻)に対し所有権移転登記手続請求訴訟を提起した際、同居の親族Dが訴状や期日呼出状等の公文書を毀棄・隠匿した。このため、被上告人は訴訟の係属を知らぬまま欠席判決(上告人勝訴)を受けた。被上告人はDを告訴したが、検察官はDの行為を犯罪の嫌疑ありと認めつつも情状により起訴猶予処分とした。被上告人は、Dの行為が再審事由(旧民訴法420条1項5号)に当たるとして再審の訴えを提起した。
事件番号: 昭和44(オ)793 / 裁判年月日: 昭和45年10月9日 / 結論: 棄却
確定判決の証拠となつた証言について偽証罪の起訴猶予処分があつたため、民訴法四二〇条一項七号に基づいて再審の訴が提起された場合においては、再審裁判所は、右起訴猶予処分の当否を問うことなく、同条二項の要件を具備したものとしてさらに再審事由の有無について判断すべきであるが、再審事由の有無自体については右処分の判断に拘束されな…
あてはめ
1. 本件において、Dは訴訟当事者ではないため、同居の妻であっても法文上の「他人」に該当すると解するのが相当である。 2. Dの公文書毀棄・隠匿行為により被上告人は防御の機会を奪われており、当該行為について検察官が「犯罪の嫌疑があるも情状により起訴を猶予」した以上、もはや有罪の確定判決を得ることは不可能である。したがって、「有罪の確定判決を得ることができないとき」に該当する。
結論
本件には民訴法338条1項5号および同2項の再審事由が認められる。したがって、再審の訴えを認めた原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事罰の対象となる他人の行為(虚偽証言や文書偽造等)によって敗訴した場合の救済規定である338条1項5号に関し、親族間での不正であっても「他人」性を認めて救済の道を開いた点に意義がある。答案上は、同条2項の「確定判決を得られない」ことの具体例として、起訴猶予処分を挙げる際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和39(オ)1374 / 裁判年月日: 昭和42年6月20日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第二項後段により再審請求するには、有罪の確定判決を得る可能性があるのに、被疑者が死亡したり、公訴権が時効消滅したり、あるいは起訴猶予処分をうけたりして有罪の確定判決をえられなかつたことを証明することを要する。
事件番号: 昭和32(ヤ)25 / 裁判年月日: 昭和34年4月23日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】上告裁判所は不服申立ての限度でのみ調査義務を負うため、上告理由として主張されていない事項や、適法な期間経過後に提出された補充書記載の事項について判断を示さなくとも、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱(民事訴訟法第338条1項9号)には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、前審の上告判…
事件番号: 昭和40(オ)423 / 裁判年月日: 昭和41年9月6日 / 結論: 棄却
起訴猶予処分は民訴法第四二〇条第二項後段にいう有罪の確定判決を得られない場合にあたる。
事件番号: 昭和48(オ)1189 / 裁判年月日: 昭和52年5月27日 / 結論: 棄却
民訴法四二〇条一項六号、二項後段に基づく再審の訴の除斥期間は、被疑者の死亡、公訴権の時効消滅、不起訴処分等の事実が判決確定前に生じたときは判決確定の時から、確定後に生じたときは右事実の生じた時から、それぞれ起算すべきである。