背任罪の時効完成による不起訴処分が民訴法第四二〇条第二項の要件をみたすためには、さらに公訴権が時効により消滅しなかつたならば有罪の確定判決がえられたであろうと認めるに足りる事実が証明されなければならない。
背任罪の時効完成による不起訴処分と民訴法第四二〇条第二項
民訴法420条2項
判旨
再審事由となるべき他人の刑事上の罰すべき行為について、時効完成により有罪の確定判決を得られない場合には、時効が完成していなければ有罪判決を得られたであろう事実の証明を要する。
問題の所在(論点)
刑事罰を伴う他人の行為を理由とする再審事由(民訴法338条1項5号等)において、公訴時効完成による不起訴処分がなされた場合、同法338条2項の要件を充たすためにはどの程度の証明が必要か。
規範
民事訴訟法338条2項(旧420条2項)にいう「証拠がないこと以外の理由により有罪の確定判決を得ることができないとき」に該当するためには、公訴権が時効により消滅しなかったならば有罪の確定判決が得られたであろうと認めるに足りる事実が証明されなければならない。
重要事実
上告人の元訴訟代理人弁護士Dが、詐欺罪および背任罪に当たる行為により確定判決に影響を及ぼすべき攻撃防御方法の提出を妨げたと主張し、再審を申し立てた。Dは詐欺罪については嫌疑なしとして不起訴となったが、背任罪については公訴時効の完成を理由として不起訴処分となった事案である。
事件番号: 昭和44(行ツ)56 / 裁判年月日: 昭和48年2月9日 / 結論: 棄却
偽証につき公訴時効が完成したことを理由とする再審の訴において、右公訴時効が完成しなかつたならば有罪判決を得られたであろうと思わせるに足りる証拠があることを明らかにしていないときは、民訴法四二〇条二項の要件を欠くものというべきである。
あてはめ
本件において、上告人は弁護士Dの背任罪が時効により不起訴となったことをもって直ちに再審事由に該当すると主張した。しかし、時効が完成していなければ有罪判決が得られたであろうという高度の蓋然性が証明される必要がある。原審において全証拠を検討した結果、時効が完成していなかったとしても有罪判決が得られたであろうと認めるに足りる事実は認められないと判断されており、この認定は正当である。
結論
背任罪の時効完成による不起訴処分があるだけでは再審事由として不十分であり、有罪判決の蓋然性が証明されない以上、再審の訴えは認められない。
実務上の射程
再審事由(338条1項各号)のうち、刑事罰を前提とするもの(5号〜7号)につき、2項の適用を受ける際の立証責任の所在と程度を明らかにしたものである。実務上、不起訴理由告知書等で時効完成が確認されたとしても、それだけで足りず、民事裁判の中で刑事上の有罪該当性を実質的に立証しなければならない点に注意を要する。
事件番号: 昭和39(オ)1115 / 裁判年月日: 昭和40年5月4日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第一項第七号を理由とする再審の訴において証人らに対し偽証罪などの告訴手続をしたとしても、同条第二項の要件を具備するとはいえない。
事件番号: 昭和39(オ)1374 / 裁判年月日: 昭和42年6月20日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第二項後段により再審請求するには、有罪の確定判決を得る可能性があるのに、被疑者が死亡したり、公訴権が時効消滅したり、あるいは起訴猶予処分をうけたりして有罪の確定判決をえられなかつたことを証明することを要する。
事件番号: 昭和44(オ)793 / 裁判年月日: 昭和45年10月9日 / 結論: 棄却
確定判決の証拠となつた証言について偽証罪の起訴猶予処分があつたため、民訴法四二〇条一項七号に基づいて再審の訴が提起された場合においては、再審裁判所は、右起訴猶予処分の当否を問うことなく、同条二項の要件を具備したものとしてさらに再審事由の有無について判断すべきであるが、再審事由の有無自体については右処分の判断に拘束されな…
事件番号: 昭和42(オ)1105 / 裁判年月日: 昭和43年3月15日 / 結論: 棄却
養子縁組無効確認請求事件において、偽造の縁組届に基づき不実の記載がされた戸籍簿に一致する戸籍謄本が証拠として提出されていた場合でも、判決が縁組の効力を判断するにあたつて、右戸籍謄本を認定に用いていないときには、右不実の記載がされた事実は、右判決に対する再審事由とはならない。