判旨
土地の占有開始時期や管理の態様等に関する事実認定について、長期間にわたる間伐等の管理事実が認められる場合には、特段の事情がない限り、取得時効の要件たる占有の継続を肯定できる。
問題の所在(論点)
1. 羅板測量による方位・距離の表示により、時効取得の対象となる土地の現地が特定されているといえるか。2. 大正期からの間伐等の管理事実に基づき、取得時効の基礎となる占有を認めることができるか。
規範
不動産所有権の取得時効(民法162条)の要件たる占有については、証拠に基づき認定された土地の管理実態(間伐等の施業、方位・距離等による現地の特定)等の諸事情を総合して判断すべきである。特に山林においては、継続的な管理行為が占有の主体性・継続性を基礎付ける重要な要素となる。
重要事実
被上告人らは、大正7、8年頃から本件係争地において、間伐等の管理を継続して行ってきた。当該土地は土地測量上の用法に従い、方位角を示して現地が表示されており、たとえそれが羅板測量(コンパス測量)によるものであっても、当事者間に争いのない方位や距離等によって現地の特定が可能であった。上告人は、原審の事実認定や証拠の取捨選択に違法があると主張して上告した。
あてはめ
まず、土地の特定について、方位角を用いた表示は土地測量上の用法に従ったものであり、測量手法が羅板測量であったとしても、当事者間の合意や距離等の客観的指標により現地を確定できるため、特定に欠けるところはない。次に、占有の態様について、被上告人らが大正7、8年頃以来、長期間にわたって間伐等の管理を継続している事実は、その土地を排他的に支配する意思をもって占有し続けていることを推認させるに十分である。したがって、原審が挙示の証拠に基づきなした事実認定及び証拠判断に不合理な点は認められない。
結論
本件上告は棄却される。長期間の間伐等の管理事実に基づき占有を肯定した原審の判断は正当である。
事件番号: 昭和44(オ)727 / 裁判年月日: 昭和45年2月26日 / 結論: 棄却
民法一六二条にいう公然の占有とは、占有者が、占有の存在を知るにつき利害関係を有する者に対して、占有の事実をことさら隠蔽しないことをいうものと解すべきである。
実務上の射程
山林等の明瞭な境界が判然としない土地における時効取得の事案において、現地の特定可能性と、間伐等の管理行為が占有継続の認定において果たす役割を示す。実務上は、登記上の地番と現況の対応関係が争点となる際の「現地の特定」の許容範囲を確認する際に参照される。
事件番号: 昭和32(オ)4 / 裁判年月日: 昭和36年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実審において主張されていない事項を上告審で新たに主張することは許されず、時効取得の主張が原審でなされていない以上、判決に違法があるとはいえない。 第1 事案の概要:上告人は、登記簿上の所有権等に基づき土地の権利変動を主張したが、原審は証拠により係争地域を被上告人の所有地と確定し、上告人の主張を退…
事件番号: 昭和32(オ)355 / 裁判年月日: 昭和36年5月4日 / 結論: 破棄差戻
物件変動の対抗要件としての明認方法は、第三者が利害関係を取得した当時にも存在するものでなければ、これをもつて当該第三者に対抗することはできない。
事件番号: 昭和32(オ)325 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
地盤所有権の取得につき未登記のままその地盤上に植栽した立木の所有権を、第三者に対抗するには、公示方法を必要とする。