甲と乙とが同一地域を重複して管理している場合には、甲の占有は平穏な占有とはいえない。
取得時効の基礎たる平穏な占有の意義。
民法192条
判旨
取得時効の要件である「平穏な占有」とは、占有の取得または維持について強暴な行為を用いないことをいう。土地の管理占有が競合し、当事者双方が重複して管理を行っているような状況は、平穏な占有とは認められない。
問題の所在(論点)
取得時効(民法162条)の要件である「平穏」な占有について、当事者双方の管理が重複して行われている場合にこれを認めることができるか。
規範
民法162条にいう「平穏な占有」とは、占有の取得または保持について、法律上許されない強暴な行為を用いないことを指す。特定の不動産について複数の者の管理が重なり合っており、占有の排他性が担保されていない状態においては、客観的に平穏な占有としての実体を欠くものと解される。
重要事実
本件係争地の占有関係をめぐり、上告人(占有による時効取得を主張する側)による管理と、被上告人(本来の権利者側)による管理が重複して行われていた。具体的にどのような態様で管理が重なっていたかの詳細は判決文からは不明であるが、原審は両者の管理が重層的に存在していた事実を認定した。
事件番号: 昭和44(オ)727 / 裁判年月日: 昭和45年2月26日 / 結論: 棄却
民法一六二条にいう公然の占有とは、占有者が、占有の存在を知るにつき利害関係を有する者に対して、占有の事実をことさら隠蔽しないことをいうものと解すべきである。
あてはめ
本件係争地においては、上告人側のみが独占的に支配していたわけではなく、被上告人側の管理も重なって行われていた。このような「管理占有の重複」が認められる事案においては、一方による占有が他方の支配を排除して平穏に維持されているとは評価できない。したがって、上告人側の占有は「平穏な占有」に当たらないと判断される。
結論
本件係争地について、上告人らによる平穏な占有は認められず、時効取得は成立しない。
実務上の射程
本判決は、平穏の要件が単なる「暴行の欠如」に留まらず、占有の態様が権利争奪的な不安定な状態にないことを含意していることを示唆する。答案上は、占有の排他性が不十分な場合や管理が競合する場合に「平穏」を否定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)970 / 裁判年月日: 昭和38年2月21日 / 結論: 棄却
山林の所有権取得時効の基礎要件たる占有は、時効援用者の単独占有でなければならない。
事件番号: 昭和34(オ)425 / 裁判年月日: 昭和36年8月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権の取得時効の要件である「所有の意思」の有無は、占有取得の原因となった権原の性質により客観的に決定される。他人の留守番として土地を使用する権原は、その性質上、所有の意思を認め得ない他主占有にあたる。 第1 事案の概要:占有者Dは、被上告人から本件土地の「留守番」として使用することを許され、これ…