山林の所有権取得時効の基礎要件たる占有は、時効援用者の単独占有でなければならない。
山林の所有権取得時効の基礎要件たる占有。
民法162条,民法164条
判旨
不動産の取得時効の要件である占有については、単独占有の事実が認められない場合には時効取得を認めることはできない。
問題の所在(論点)
民法162条に基づく取得時効の成立において、取得時効を主張する者が当該不動産を単独で占有しているといえるか(単独占有の要否)。
規範
民法162条が規定する時効取得の要件である「占有」は、時効により権利を取得しようとする者が排他的・独占的に支配していることを要し、共同相続や共有関係にある場合を除き、単独占有の事実が認められる必要がある。
重要事実
上告人は、本件土地について取得時効が成立したと主張したが、原審は証拠に基づき、上告人による単独占有の事実を否定した。上告人はこの判断に違法があると主張して上告した。
あてはめ
原審が認定した事実関係に照らせば、本件土地に対する上告人の単独占有の事実は認められないと判断される。本件において上告人の主張する占有態様は、取得時効の基礎要件たる「占有」の排他性を欠くものであり、時効取得を肯定するに足りる占有とはいえない。したがって、原審の判断に違法は見当たらない。
事件番号: 昭和44(オ)727 / 裁判年月日: 昭和45年2月26日 / 結論: 棄却
民法一六二条にいう公然の占有とは、占有者が、占有の存在を知るにつき利害関係を有する者に対して、占有の事実をことさら隠蔽しないことをいうものと解すべきである。
結論
本件土地に対する単独占有の事実が認められない以上、上告人による取得時効は成立せず、上告を棄却する。
実務上の射程
時効取得の要件である「所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した」という要件の前提として、占有の排他性(単独占有)が問題となる事案において、その事実認定の重要性を示すものである。答案上は、数人で土地を利用しているような事案において、自己の単独占有を肯定できるかという占有の態様のあてはめにおいて参照すべき判例である。
事件番号: 昭和37(オ)804 / 裁判年月日: 昭和38年11月15日 / 結論: 棄却
証拠を総合して事実を認定するに際し、証人の供述中に認定事実に反する趣旨の部分が存在していても、その部分を証拠として採用しなかつたことを判文上明示しなければならないものではない。
事件番号: 昭和35(オ)348 / 裁判年月日: 昭和35年9月2日 / 結論: 棄却
一 空襲により一家全滅した本家の再興のため、親族の協議により相続人に選ばれて本家の家業を継ぎ、相続財産に属する土地を占有している二二歳の女子につき、原審認定のような事実関係(原判決理由参照)があるときは、同人がその土地の所有権を取得したものと信ずるにつき過失はないものと解すべきである。 二 民法第一六〇条は、相続財産の…
事件番号: 昭和34(オ)425 / 裁判年月日: 昭和36年8月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権の取得時効の要件である「所有の意思」の有無は、占有取得の原因となった権原の性質により客観的に決定される。他人の留守番として土地を使用する権原は、その性質上、所有の意思を認め得ない他主占有にあたる。 第1 事案の概要:占有者Dは、被上告人から本件土地の「留守番」として使用することを許され、これ…