証拠を総合して事実を認定するに際し、証人の供述中に認定事実に反する趣旨の部分が存在していても、その部分を証拠として採用しなかつたことを判文上明示しなければならないものではない。
証言の一部の排斥は判文上明示しなければならないか。
民訴法191条1項3号
判旨
不動産の二重譲渡がなされた場合、一方が他方に対して持分の取得を主張するためには、対抗要件として登記を備える必要がある。また、占有者が所有の意思を否定する客観的事実がある場合には、自主占有の推定が覆され、時効取得は認められない。
問題の所在(論点)
1. 不動産の持分贈与を受けた者が、同一の不動産を譲り受けた他方の相続人に対し、登記なくして権利を対抗できるか。2. 所有の意思の有無を判断するにあたり、占有者の具体的な行動等の事実関係を考慮できるか。
規範
不動産の物権変動の対抗要件(民法177条)に関し、同一の譲渡人から二重に譲渡を受けた者は、互いに「第三者」の関係に立つため、登記を先に備えた者が優先する。また、取得時効(民法162条)の要件である「所有の意思」(自主占有)は、占有取得の原因たる権原の性質により客観的に定められるが、占有継続中の事実関係から所有の意思がないと推定される場合には認められない。
重要事実
Dは本件土地家屋の持分2分の1を上告人に贈与したと主張されたが、原審はこれを認めず、むしろDから亡E(被上告人らの被相続人)への贈与を認めた。上告人は登記を経由しておらず、一方で被上告人らは亡Eの権利を相続した。また、上告人は本件土地家屋を占有していたが、原審の認定によれば、所有の意思をもって占有していたとは認められない諸事実が存在した。さらに、本件土地家屋は被上告人らから参加人へ売却された。
事件番号: 昭和32(オ)795 / 裁判年月日: 昭和34年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産買入れの委任契約に基づき受任者が自己の名で取得した不動産の所有権は、特約により委任者に当然に帰属するとしても、その登記がない限り、委任者はその所有権の取得を第三者に対抗することができない。 第1 事案の概要:上告人は、受任者Dに対し、本件土地をDの名義で連合会から買い受けた後、上告人に名義を…
あてはめ
1. 仮に上告人への持分贈与があったとしても、亡EもまたDから贈与を受けており、両者は対抗関係に立つ。上告人は移転登記を経由していないため、民法177条に基づき、亡Eの相続人である被上告人らに対して権利を対抗できない。2. 時効取得の主張についても、上告人の占有状況に関する具体的事実(原判決が挙げた諸点)に照らせば、上告人が「所有の意思」をもって占有していたとの推定は破られ、自主占有は否定される。
結論
上告人は登記がない以上、被上告人らに対して持分の取得を対抗できず、また所有の意思が認められないため時効取得も成立しない。したがって、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
二重譲渡における対抗問題の典型事例であるとともに、自主占有の推定(民法186条1項)が外形的客観的事実によって覆される過程を示す。答案上は、登記の欠缺による不利益と、時効取得における自主占有否定の論理を組み合わせて論じる際の参考となる。
事件番号: 昭和33(オ)547 / 裁判年月日: 昭和34年4月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産を時効取得した占有者は、時効完成後に当該不動産を譲り受け登記を了した第三者に対し、登記がなければ時効による権利取得を対抗できない。また、当該第三者が時効取得の事実について悪意であっても、背信的悪意者と評価される特段の事情がない限り、同様である。 第1 事案の概要:1.上告人ら51名は、本件山…
事件番号: 昭和35(オ)232 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
代金支払が契約の数ケ月後であるとの一事によつては、登記欠缺を主張しえない背信的悪意者とはいえない。
事件番号: 昭和37(オ)970 / 裁判年月日: 昭和38年2月21日 / 結論: 棄却
山林の所有権取得時効の基礎要件たる占有は、時効援用者の単独占有でなければならない。
事件番号: 昭和28(オ)1214 / 裁判年月日: 昭和30年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の売主が目的物の所有権が買主に属することを争う場合、買主は当該売主に対し、所有権確認の訴えを提起する確認の利益を有する。 第1 事案の概要:上告人A1は、自らおよび上告人A2の法定代理人として、本件各不動産を被上告人(買主)に売り渡した。しかし、その後上告人A1は、本件不動産の所有権が被上…