代金支払が契約の数ケ月後であるとの一事によつては、登記欠缺を主張しえない背信的悪意者とはいえない。
登記欠缺を主張しえない背信的悪意者と認められなかつた事例。
民法177条
判旨
不動産の二重譲受人において、単なる悪意にとどまらず、登記の欠缺を主張することが信義則に反すると認められる特段の事情(いわゆる背信的悪意)がない限り、民法177条の「第三者」として登記の欠缺を主張することができる。
問題の所在(論点)
不動産の二重譲渡において、第一の譲受人が未登記である場合、第二の譲受人が「悪意」であれば直ちに民法177条の「第三者」から除外されるのか。また、どのような場合に信義則違反(背信的悪意者)として登記の欠缺を主張できなくなるのか。
規範
不動産売買において、第一の買主が登記を備える前に第二の買主が同一不動産を買い受け登記を了した場合、第二の買主が第一の買主の存在を知っている(悪意)だけでは足りず、その登記の欠缺を主張することが信義則に反すると認められる「害意(背信性)」がある場合に限り、登記なくして対抗しうる不法占有者等と同視される。
重要事実
上告人は本件土地を買い受けたが登記を未了であった。その後、被上告人が同一土地につき売買契約を締結し、所有権移転登記を経由した。上告人は、被上告人が上告人の所有権取得を知りながら登記を経由したことは信義則に反し、また上告人の所有権取得を承認していたため、登記なくして対抗できると主張した。
事件番号: 昭和33(オ)547 / 裁判年月日: 昭和34年4月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産を時効取得した占有者は、時効完成後に当該不動産を譲り受け登記を了した第三者に対し、登記がなければ時効による権利取得を対抗できない。また、当該第三者が時効取得の事実について悪意であっても、背信的悪意者と評価される特段の事情がない限り、同様である。 第1 事案の概要:1.上告人ら51名は、本件山…
あてはめ
原審が認定した事実関係によれば、被上告人が上告人の所有権取得を承認し登記欠缺主張の権利を放棄した事実は認められない。また、被上告人の所有権取得および登記の経緯において、単なる悪意にとどまらず、上告人を害する積極的な「害意」があったとは認められない。売買代金の支払が契約の数ヶ月後であった等の事情も、この判断を左右するものではない。
結論
被上告人は民法177条の「第三者」に該当し、登記を備えている以上、上告人は自己の所有権取得を被上告人に対抗できない。
実務上の射程
自由競争の範囲内とされる「単なる悪意者」と、信義則上保護されない「背信的悪意者」を区別する。司法試験の答案では、177条の「第三者」の定義(登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者)を述べた後、背信的悪意者排除の法理として、主観的態様(悪意)および客観的事態から「背信性」を具体的に検討する際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和32(オ)795 / 裁判年月日: 昭和34年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産買入れの委任契約に基づき受任者が自己の名で取得した不動産の所有権は、特約により委任者に当然に帰属するとしても、その登記がない限り、委任者はその所有権の取得を第三者に対抗することができない。 第1 事案の概要:上告人は、受任者Dに対し、本件土地をDの名義で連合会から買い受けた後、上告人に名義を…
事件番号: 昭和40(オ)1031 / 裁判年月日: 昭和41年7月28日 / 結論: 棄却
村税滞納処分による差押についても、民法第一七七条の適用があるものと解すべきである。
事件番号: 昭和37(オ)804 / 裁判年月日: 昭和38年11月15日 / 結論: 棄却
証拠を総合して事実を認定するに際し、証人の供述中に認定事実に反する趣旨の部分が存在していても、その部分を証拠として採用しなかつたことを判文上明示しなければならないものではない。