判旨
売買契約の売主が目的物の所有権が買主に属することを争う場合、買主は当該売主に対し、所有権確認の訴えを提起する確認の利益を有する。
問題の所在(論点)
売買契約の当事者(売主)が買主の所有権を否定している場合、買主が当該売主を被告として所有権確認の訴えを提起することは、確認の利益を具備するか。
規範
確認の訴えにおける確認の利益が認められるためには、原告の権利または法的地位に現存する不安・危険が存在し、それを取り除くために確認判決を得ることが有効かつ適切である必要がある。特に、特定の権利関係について紛争の当事者となっている者からその権利を否定されている場合には、その者に対する確認の利益が認められる。
重要事実
上告人A1は、自らおよび上告人A2の法定代理人として、本件各不動産を被上告人(買主)に売り渡した。しかし、その後上告人A1は、本件不動産の所有権が被上告人に属することを争った。そのため、被上告人は上告人A1に対し、本件不動産の所有権が自己に属することの確認を求めて提訴した。
あてはめ
上告人A1は、本件売買契約において売主または売主の法定代理人という立場にあり、本件売買に無関係な第三者ではない。このような立場の者が、有効に成立した売買契約に基づく所有権の移転を否定し、被上告人の所有権を争っている以上、被上告人の法的地位には現存する不安が生じている。したがって、紛争の直接の当事者である上告人A1に対し、所有権の帰属を確定させることは、被上告人の不安を除去するために有効かつ適切であるといえる。
結論
上告人A1が所有権を争う以上、被上告人は同上告人に対し、本件不動産が自己の所有に属することの確認を求める利益を有する。
実務上の射程
事件番号: 昭和37(オ)804 / 裁判年月日: 昭和38年11月15日 / 結論: 棄却
証拠を総合して事実を認定するに際し、証人の供述中に認定事実に反する趣旨の部分が存在していても、その部分を証拠として採用しなかつたことを判文上明示しなければならないものではない。
所有権確認の訴えにおける被告適格および確認の利益の基本例を示すものである。契約当事者など、権利関係を否定し紛争を惹起している当事者を被告とする限り、確認の利益は肯定されやすい。実務上は、登記名義人でない者であっても、所有権を強力に主張して妨害している者に対しては、本判例を根拠に確認の訴えを選択し得る。
事件番号: 昭和39(オ)1008 / 裁判年月日: 昭和40年9月17日 / 結論: 棄却
原告の権利を否認する被告において、その権利を第三者の権利であると主張するときでも、その結果原告の権利の行使に障害となることが明らかであるときは、被告に対して権利の確認を求める利益があると解すべきである。
事件番号: 昭和24(オ)266 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】委任の趣旨に反して受任者が第三者の名義で不動産を買い受けた場合、当該不動産の所有権は売主から名義人となった第三者へ直接移転する。 第1 事案の概要:上告人は訴外Fに対し、本件宅地および畑地の買受けを委託した。しかし、Fは上告人の委託の趣旨に反し、訴外Eの名義で売主Dから本件不動産を買い受け、Eへの…
事件番号: 昭和32(オ)583 / 裁判年月日: 昭和34年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記法5条(現174条)にいう「他人のために登記を申請する義務がある者」とは、他人のために登記申請手続をすべき具体的義務を負う者を指し、単に譲渡人の代理人として譲受人に残代金支払を督促したにすぎない者はこれに当たらない。 第1 事案の概要:訴外Dから本件物件を買い受けた者が、被上告人に対し、…
事件番号: 昭和29(オ)718 / 裁判年月日: 昭和30年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、第二の買受人は、自らが登記を具備していなくとも、第一の買受人に対して登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する「第三者」に該当する。 第1 事案の概要:上告人は、係争家屋を被上告人が代物弁済により取得する以前に譲り受けていたと主張した。しかし、上告人は当該譲受について何…