原告の権利を否認する被告において、その権利を第三者の権利であると主張するときでも、その結果原告の権利の行使に障害となることが明らかであるときは、被告に対して権利の確認を求める利益があると解すべきである。
権利が自己に属することを主張しない者に対する確認の利益
民訴法225条
判旨
建物の所有権取得を主張する者が、現に保存登記を有する名義人に対し、当該登記が真実の所有権に基づかないことを理由に所有権確認を求めることは、登記名義人が真実の所有関係を争っている以上、法律上の利益を有する。
問題の所在(論点)
不動産の保存登記名義人であった者が、現在は第三者に所有権移転登記を経由している場合であっても、原告の所有権取得を争っているときは、当該名義人に対する所有権確認の訴えに確認の利益(当事者適格)が認められるか。
規範
所有権確認訴訟における被告の当事者適格および確認の利益は、原告が主張する所有権の帰属を否定し、自己の権利を主張するなどして原告の権利行使に障害を及ぼす者に対して認められる。特に、不動産登記名義人はその存在自体が真実の権利者の権利行使を妨げる実体的な障害となるため、当該名義人が所有権を争う場合には、その者との関係で所有権の帰属を確定する法律上の利益が認められる。
重要事実
被上告人は、Dから本件建物の贈与を受け所有権を取得したと主張し、上告組合および上告人Aに対して所有権確認等を求めた。これに対し上告人Aは、本件建物は上告組合の前身が建築したものでDの所有ではないこと、また建築許可の関係で便宜上A名義で保存登記がなされた後、上告組合に所有権移転登記がなされたものであると主張して、被上告人の所有権を争った。上告人Aは、自身は既に登記を移転しており現在は無権利者であるから当事者適格がないと主張して上告した。
事件番号: 昭和40(オ)49 / 裁判年月日: 昭和41年10月18日 / 結論: 棄却
代理人が自己の名を示さず本人の名においてなした行為も代理行為として有効である。
あてはめ
上告人Aは、本件建物の保存登記名義人であっただけでなく、訴訟において「本件建物はDの所有ではなく、上告組合の前身の所有である」旨を主張し、被上告人の所有権取得を真っ向から否定している。このようなAの主張は、被上告人が現在の登記名義人である上告組合に対して所有権移転登記を請求するにあたり、実体法上の権利関係を不明確にする直接的な障害となっている。したがって、被上告人が現在の権利関係を安定させるためには、登記名義の経緯に関与し、かつ現在も権利を争うAとの間でも所有権の帰属を確定させる必要があるといえる。
結論
被上告人は、上告人Aとの関係においても本件建物の所有権の帰属を確定する法律上の利益を有し、Aは被告としての当事者適格を有する。したがって、原審の判断は正当である。
実務上の射程
登記名義人を被告とする所有権確認請求の可否に関するリーディングケースである。登記上の名義が存在すること自体が確認の利益を基礎づける要素となるが、本判決は「登記名義人が権利関係を争っていること」を重視しており、答案上は、登記の公信力がないわが国において、登記名義が権利行使の障害(不安)となっていることを指摘する文脈で使用する。
事件番号: 昭和32(オ)994 / 裁判年月日: 昭和36年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の実質的な所有者が、登記名義人である他名義での売却を許容して売買を委任した場合、受任者が自己の名義で売買契約を締結したとしても、代理権の行使(顕名)があったものとして本人に効果が帰属する。 第1 事案の概要:本件宅地の実質的な所有者である上告人は、夫であるDに対し、本件宅地の売却を委任した。…
事件番号: 昭和28(オ)1214 / 裁判年月日: 昭和30年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の売主が目的物の所有権が買主に属することを争う場合、買主は当該売主に対し、所有権確認の訴えを提起する確認の利益を有する。 第1 事案の概要:上告人A1は、自らおよび上告人A2の法定代理人として、本件各不動産を被上告人(買主)に売り渡した。しかし、その後上告人A1は、本件不動産の所有権が被上…
事件番号: 昭和37(オ)804 / 裁判年月日: 昭和38年11月15日 / 結論: 棄却
証拠を総合して事実を認定するに際し、証人の供述中に認定事実に反する趣旨の部分が存在していても、その部分を証拠として採用しなかつたことを判文上明示しなければならないものではない。